白星に届かずとも、課題解消へ光明が差し込む奮闘だった。阪神岩崎優投手(24)が、6回1/3を投げて2失点。ヤクルト打線が3巡目に入ったところでつかまって今季5敗目となったが、先発4本柱以外の投手でなかなか勝てない台所事情の中での力投だった。無念の黒星を糧に、岩崎よ、たくましくなってくれ。

 マウンドに輪ができた。岩崎は唇をかみしめ、中西投手コーチの話にうなずいた。視線は右翼からやって来るリリーフカーに向いていた。そこから降りた安藤に近づくと、小さく頭を下げた。7度目となった今季初勝利への挑戦が、7回1死で幕を閉じた。

 「もっとピンチに強いピッチャーにならないといけないです」

 最初のピンチで屈した。両軍無得点で迎えた7回。打率3割3分を超える先頭の2番川端に粘られた。2球で追い込んでから、4球ファウル。最後は9球目の高め直球を左前に運ばれた。1死二塁で4番畠山に三遊間を破られると、虎党のため息が漏れた。先制適時打を打たれた直後。続く5番雄平への初球がど真ん中に入り、右中間へ適時三塁打。7回途中5安打2失点での5敗目。悔しさを押し殺しながら口を開いた。

 「技術的には課題としていたこと(制球)が出来たと思うけれど、ピンチの場面で落ち着いて投げないと、勝てるピッチャーにはなれないと思います」

 敗れはしたが、中盤までは文句なしの内容。打線の援護に恵まれなかった面もある。初コンビを組んだ小宮山のリードに導かれ、コースを丁寧に突く本来の投球が戻った。前日まで藤浪、メッセンジャーは2試合連続で初回失点していたが、福留の好守にも支えられ無失点発進。前回の7月25日DeNA戦に続いて四死球0。安定感のある投球で6回まで二塁すら踏ませなかった。それだけに「(走者が二塁に進んで)変わったことはなかったけれどコントロールが甘くなってしまったので…」と7回の落とし穴が悔しい。

 ルーキーイヤーの昨年は5勝をマークしたが、7戦0勝と苦しい2年目が続く。だが、今回の降板時にはスタンドから拍手が送られた。中西投手コーチも「よく投げた。強いて言うなら(2失点目の)雄平の初球がもったいなかった。来週? 当然」と8度目のチャンスを認めた。チームでメッセンジャー、藤浪、能見、岩田の4本柱以外の先発投手に勝利がついたのは、7月4日の山本を最後に4試合しかない。岩崎の奮闘で先発5番手に苦しむ課題の解消が近づきつつある。次回は9日DeNA戦(横浜)が予定される。昨季1戦1勝の港町で完全復活を目指す。【松本航】

 ▼岩崎は今季、相手の打順が3巡目以降の被打率が5割(32打数16安打)。この試合では7回に3長短打を浴びた。今季初登板の4月2日ヤクルト戦(神宮)でも、1点援護をもらった直後の5回に4安打され4失点するなど、中盤以降の苦戦が目立つ。