黒田撃ちも吹き飛ぶ敗戦だったけれど、色あせないヒットもあった。前カードで13打席無安打と苦しんだルーキー江越大賀外野手(22)が、2回に二塁打。同じく過去2試合で7打数1安打だったマット・マートン外野手(33)は、黒田から4連打での先制劇の口火二塁打を放っていた。猛虎復調へ欠かせない2人のバットが再び点火した。

 表情を決して変えないマウンドの背番号15。対する二塁ベース上の江越もまた、静かに喜びをかみしめた。過去3戦2敗と苦しみ続けた広島黒田をじわり、じわりと追い詰める。そのつなぎ役をプロ1年生が堂々と担った。

 江越 追い込まれてから、しっかりとついていけました。

 今成の適時打で1点を先制した2回1死一塁。攻略ムードをさらに加速させた。たったの2球で追い込まれての窮地。2ストライクになると過去50打数1安打という嫌なデータもあった。それでもベルト付近の高さに浮いた外角球に食らいつく。しぶとく運んだ打球は、右翼ロサリオが追う先をいった。前カード甲子園3連戦では13打席安打なし。悩める男が二塁打で、繊細なコントロールを誇る黒田を攻略した。

 4連続長短打での波状攻撃。その接着剤が江越なら、最初の火付け役はマートンだった。前の4人が計11球で凡退した劣勢ムードを、2回1死で切り裂いた。マートンらしい右方向への二塁打でチャンスを作り、後の3得点を演出。2日ヤクルト戦ではチャンスの終盤に2度の見逃し三振。球審の判定に不満げな表情を見せるシーンもあったが、8打席ぶりの安打は不安を拭い去った。関川打撃コーチも「特徴をしっかり頭に入れている。黒田から点数を取れたのはこれからの自信にしたらいい」と打線の進化を感じ取った。

 この日のマツダスタジアムは午後3時時点で気温33度。ナインはその直後に球場入りすると、空調の効いた涼しい室内でストレッチを開始した。通常は同3時半ごろから全体練習を開始するが“サマータイム”を採用。福留ら5選手が同3時40分にグラウンド入りしたのが最初で、同3時50分ごろに多くのナインが猛暑の地へ向かった。通常より20分程度、涼しい場所で体力の浪費を避けた。短時間集中スタイルが、2回の黒田撃ちにつながった。

 最後は接戦を落とした。江越は1点リードされた8回2死一塁での空振り三振を「もう1度冷静になって打席に入らないといけない」と反省する。それでも2人の二塁打には、課題克服の付加価値があった。何より男気(おとこぎ)右腕を苦しめた事実が今後、必ず生きてくる。【松本航】