やっと、やっと勝った。阪神岩崎優投手(24)が今季8度目の先発で初勝利を手にした。3点リードの7回、先頭梶谷に2安打目を許したところでアクシデント発生…。足がつり、続投不可能となった。不穏なムードも、先輩救援陣が一丸となってカバー。2年目のジンクスに苦しんだ昨季5勝左腕が、チーム待望の先発5番手の座を手にした。

 9回に守護神呉昇桓が1点差まで追い詰められている光景を、岩崎はベンチに座ってじっと見つめていた。「何も望まず、なるようになる、ですよ。川藤さんの言葉ですよね」。なるようになった。試合終了後、ベンチ前で和田監督とがっちり握手。チーム101試合目で今季初勝利。ようやく笑顔になった。

 「テンポを意識して、1人1人打者を打ち取ること。球数を気にせずに、1イニングずつ抑えることを考えました」

 試合序盤から球数は多くなったが、1人ずつ丁寧に抑えていった。7回先頭の梶谷との対戦中に岩崎は2度、左足をつりかけた。中前打されると、異変を告げベンチに下がった。治療を受けたが、大事を取って降板。「ふがいないですね。鍛え直します」。6回0/3を2安打無失点。足をつりながら投げた執念が実った。

 悩み、焦り、そして試行錯誤を繰り返した。プロ1年目の昨年は初登板初先発で初勝利。約2か月間、白星に恵まれなかったが、焦りはなかった。反して2年目の未勝利の日々は延々と長く感じた。何かを変えなくてはいけない-。その思いから、がむしゃらにボールを投げ込んだ。

 4月17日の1度目の出場選手登録抹消後に、ブルペン入りを2度にした。登板4、5日前に1回目のブルペンに入る。多いときは170球近く納得できるまで投げ込んだ。1週間で投じた数は昨年の2倍に。「野球以外にも、とにかく変えないといけないと思った」。早いときは午後9時からベッドに入り、目をつむった。体のサイクルが変われば何か見つかるかもしれない。生活全てを、この1勝に向けた。

 この初勝利はチームにとっても大きかった。和田監督は「チームにとっても、5番手というところで、ちょっと安定感のある投手がまた出てきたとは言わんけど、もう1つ勝って初めてだな。次に期待している」。なかなか先発5、6番手が定まらなかった状況に光が差した。次回登板は16日ヤクルト戦(神宮)が有力。「次はありますから。次、しっかり投げられるように頑張ります」。途中降板はもうゴメン。このままでは終われない。【宮崎えり子】

 ▼岩崎が今季8試合目の先発で初勝利。阪神の先発4本柱(藤浪、能見、メッセンジャー、岩田)以外の先発勝利投手は5人目。他に岩貞、岩本、サンティアゴ、山本が各1勝。また、13年ドラフト6位の岩崎は、新人の昨季5勝。ドラフト最下位指名の投手が入団1年目から2年連続で勝利を挙げたのは、球団史上初。