今最も頼もしい男だろう。「好機で走者をかえす」。阪神マウロ・ゴメス内野手(30)は4番で最も大切な仕事を、さも当たり前かのようにこなしてみせた。

 「いい球を待って打つことだけ心がけたよ。チャンスであればあるほど落ち着いて。それが出来ていると思うね」

 初回1死一、三塁。G砲は雄太の内角高め直球に反応した。打球は詰まらされバットも真っ二つ。しかしこの男のパワーで右翼前に持っていった。ポトリと落ちる先制打で、来日最長タイとなる6戦連続打点を記録。ここ6試合の打率も22打数12安打、驚異の5割4分5厘と止まらない。

 先月6日に生まれた次女アイミーちゃん。出産後も入院を続けていた病室に、1つの大きなバラの花束が贈られた。和田監督からのサプライズだった。「とても大きな花束だったよ。うれしかったね」。ゴメスも指揮官の粋な計らいに喜んだが、誰よりも喜んでいたのは夫人だった。「妻がそのプレゼントをとても喜んでいたんだよ! その顔を見てるのが一番うれしかったね!」。

 前日10日、和田監督は「まずは初戦に1つ取って」と必勝のハッパをかけていた。誰よりもこの日の勝ちを欲したボスに、4番がバットで最高の恩返しをした。「とにかくチームに貢献することが一番。それが初回に出来て良かったよ」。最後に笑顔で振り返った助っ人。これからも「勝利」という最高の贈り物を運んでいく。【梶本長之】

 ▼ゴメスが、8月5日広島戦から自身最長タイの6試合連続打点。今季4月16日中日戦~同22日DeNA戦に並んだ。なお球団最長はバースの13試合連続で、86年6月18日ヤクルト戦~7月4日巨人戦で記録(プロ野球最長)。