緊急登板で念願のプロ初勝利だ。日本ハム3年目の新垣勇人投手(29)が、ロッテ打線を5回2失点に抑え、通算5試合目でプロ初白星をマークした。メンドーサが急性へんとう炎で登板を回避し、急きょ巡ってきた今季2度目の先発チャンスをものにした。12年ドラフトで大谷と同期入団の右腕が、代役をきっちり果たし、チームを3連勝に導いた。

 三十路(みそじ)を前に、3年目の新垣がプロ初白星をかなえた。興奮で、上気する体が心地よかった。「高揚して、ポカポカしています」。先取点を許したが、生命線のフォークで嫌な流れを断ち切った。5回2失点でメモリアルな1勝。勝利球を握りしめ「すごい硬いです」。触り慣れているはずの白球に1勝の重みが加わっていた。

 思わぬ形でつかんだ白星だった。この日、メンドーサが急性へんとう炎で先発を回避。イースタン・リーグ、ロッテ戦で先発予定だった新垣は急きょ、埼玉・浦和から球場に向かった。栗山監督は実績のある浦野や上沢、武田勝らに代役を任せる考えもあったという。「新垣の持っている運に懸ける」。指揮官の願いも乗せて、奮闘した。

 苦節3年目で飾った節目だった。13年に社会人野球の名門・東芝からドラフト5位で入団。大卒社会人5年目で一流企業の安定した生活よりも、夢に懸けた。この年の12球団の新人で最年長の挑戦だった。1年目の4月9日楽天戦でプロ初登板初先発。即戦力として抜てきも5回持たず7失点。将棋で初段並みの腕前を持ち「10手先くらいまでは読める。詰め将棋なら13手先まで読める」。ただ、プロ野球人生は、将棋盤上のように先が読めずにいた。

 チームは4カード連続で勝ち越しが決まった。栗山監督は「一生懸命さが伝わった」と訴えた。苦悩を味わい続けてきた新垣は、晴れ舞台に誓った。「ここからが野球人生の再出発」。夢にまで見た1勝は、プロの始まりだった。【田中彩友美】

 ◆新垣勇人(あらかき・はやと)1985年(昭60)10月21日、神奈川・相模原市生まれ。国士舘高で03年センバツ出場。横浜商大-東芝を経て12年ドラフト5位で日本ハム入団、12球団最年長ルーキーだった。13年4月9日楽天戦(東京ドーム)でプロ初登板。今季推定年俸815万円。183センチ、85キロ。右投げ右打ち。

 ▼日本ハムはメンドーサに代わって先発した新垣が勝利。予告先発の変更で代役が勝利は、6月19日に戸村(楽天)が辛島に代わって登板したロッテ戦で勝って以来9人目。日本ハムでは89年6月25日西武戦の柴田以来26年ぶり2人目。代役での白星がプロ初勝利は、94年ハートリー(ロッテ)14年浜田(中日)に次いで3人目。