長い間待たせてゴメスね。ブレーキになっていた阪神4番マウロ・ゴメス内野手(30)が11試合ぶりに打点を挙げた。5回にリードを4点に広げる2点適時打。主砲が目覚めた後も攻撃の手を緩めず、8月最多の9得点を挙げた。久しぶりの甲子園で地に足をつけた戦いぶりで、8月の月間勝ち越しを決めた。この1勝、優勝への岐路になる。

 ゴメスの迷いは消えていた。2点リードの5回2死満塁。フルカウントになった。「ボールをしっかりと見て、ストライクゾーンに来たボールだけを打ちにいこうと考えていたんだ」。ヤクルトロマンの6球目。外角高めの146キロ直球に食らいついた。

 「グッド! グレイト! タイムリーになって良かったよ!」

 広く空いた一、二塁間をぶち抜いた。右前への2点適時打で8月14日ヤクルト戦以来、11試合ぶりとなる打点を手に入れた。一塁ベースに立つと、2度の力強い拍手。昨年の来日後、10試合連続打点なしは最長だった。連敗した広島2連戦も7打数1安打と苦しんだ。前夜「何もないよ」と口をつぐんだ4番が、快勝後は何度もうなずきながら手応えを語った。

 「今日はボールもよく見えていたし、スイングも良かった。これを維持していくだけだよ」

 結果が出ず、負のサイクルに陥っていた。なんとか対応したい欲から、相手の球種すべてにヤマを張っていた。そのため、考え過ぎてボールを捉えるタイミングが遅れた。思い通りの方向に打球が飛ばず、ボール球に手を出す悪癖も出てきた。オマリー打撃コーチ補佐は「昨日のマエケンも、2ストライクからのスライダーは全部ボールなんだよ…」と同じパターンで2三振した主砲を分析していた。

 甲子園に戻っての試合前練習。前回の甲子園開催時は午後2時15分ごろだったグラウンド入りを、約30分遅くした。その間はクラブハウス内で、オマリー補佐と意見交換。特別な打ち込みはあえてせず、頭の整理に重きを置いた。そこまでたまったモヤモヤがようやく吹き飛んだ。

 「このシリーズの重要性は分かっている。仕切りなおしと思ってやっていきたい」

 これまでの戦いでは「自分はベストを尽くすだけ」と繰り返してきた。そんな男はこの夜、明確に優勝を争うヤクルトを意識した。和田監督も「4番に打点が付くと精神的に落ち着く。少しは楽になると思う」と期待する。4番が打てば、猛虎は強さを取り戻す。【松本航】