鮮やかな逆転劇だった。1点を追う8回1死二塁、ヤクルト打線が牙をむいた。川端がメッセンジャーの初球をたたく。外角高めの直球。阪神ファンが静まりかえる中、打球は中堅手の頭上をライナーで越えた。同点打。直後の山田も初球を打って、右中間への勝ち越し三塁打。試合を一気にひっくり返し、一挙5点のビッグイニングにした。川端は「後ろに山田がいると歩かされない。だから初球から思い切りいけた」と、つながりを口にした。

 この日は1回に畠山が自己最多の86打点目となる中前適時打を放ち、先制していた。セ・リーグのタイトルを独占する3人の“ヤク者”がそろい踏み。首位阪神との緊迫した接戦を終盤の猛攻で制した。それは真中満監督(44)のプランどおり。「ウチは先発が粘って接戦に持ち込まないと勝ち目がない」と、この試合の展開を予言するように話していた。

 本当に予言していた人もいた。野村バッテリーコーチは28日の試合後に、この日の勝利を言い当てていた。根拠はベンチに盛った塩だ。前回の甲子園で初戦に塩を盛ったところ、その試合には敗れたものの、2戦目と3戦目に勝った。28日の試合に負けた後、野村コーチは「盛り塩の効果は2戦目からなんだよ」と不敵に笑っていた。

 負けか引き分けで自力優勝が消滅する危機だったが最後は千両役者の山田の2ランまで飛び出し、回避した。それにしても、逆転への口火を切ったのは、28日の試合前に盛り塩を体に擦り込んでいた今浪の遊撃内野安打。本当に塩の御利益があったのかもしれない。【竹内智信】