巨人が今季初の5点差をはね返して、同一カード3連勝を飾った。5点を奪われた直後の3回、片岡治大内野手(32)の7号ソロを口火に、打者11人の猛攻で6安打を集め、一気に同点。5回には、村田修一内野手(34)が13年連続2桁本塁打となる決勝の10号ソロを放った。序盤でバッテリーに代打を送る攻めの采配もはまって、3位ながら首位阪神に1ゲーム差に再接近。1日から2位ヤクルトとの北陸2連戦など、勝負の9月に弾みをつけた。

 節目の1発も、素直に喜べなかった。巨人村田は口元をグッと引き締め、13年連続2桁本塁打到達のベース1周を終えた。不振やケガに襲われながら、たどりついた1つの大台は、決勝のアーチ。「続けられたのは良かったですが、10本はこの時期に打つ数字ではないです。もっと打ちたいですし、もっと打たないといけないです」と、アーチストの本音が口を出た。

 鮮やかに、豪快に、右方向に描かれた放物線が原点だった。「僕にとって、ホームランといえば清原さん。昔から見ていて、すごいなと思った。1発の魅力ってすごいなと」。これが運命なのか、村田の代名詞も右方向への1発。「チェンジアップをイメージしながら、反応で」打った直球を、オンリーワンを証明するように右翼席へと運んだ。

 強烈な個の力の結集が天敵を打ち砕いた。5点を奪われた直後の3回。片岡の7号ソロを合図に、坂本から単打のみで4連打。今月2敗を喫した若松に重圧をかけ、村田の押し出し四球、隠善の2点適時打で一気に試合を戻した。「(失策がなければ)1点で止まった5点」と適時失策の村田ももちろん、燃え上がった闘志。ひしひしと感じたのは指揮官だった。

 原監督 (点を奪われ)カッカした状態で、クールダウンをさせないとと思っていたところだったが、逆にカッカして、悪い血液といい血液が流れた1イニングでした。

 沸き上がる選手に応えるように、攻めの采配での勝負を決断した。2点ビハインドの3回1死満塁で小林に、2死満塁で田口に代打を起用。序盤3回でバッテリーを交代する勝負手を打った。捕手2人制を敷く中、リスクがなかったのかと問われても、「5点ビハインドが最大のリスク。攻撃を重視した」と明快だった。

 本物の強さを感じさせたのは8回だった。片岡がこの日2本目のソロ本塁打を放ち、阿部の適時二塁打などで3点を追加。最高の流れで試合を締めた。原監督は「もう1点、もう1点と中軸が機能し始めたのが良かった」と評価。消化試合数が多い関係で、負ければ自力V消滅の危機的状況が続いていたが、ひとまず回避。ドキドキの混戦の中、勝利の味を知る勝負師の本能で勝負の9月を制する。【久保賢吾】

 ▼巨人が逆転で3連勝。巨人の5点差以上の逆転勝ちは14年4月2日DeNA戦(3-8→15-9)以来だが、中日戦では04年4月13日(1-7→11-10)以来、11年ぶり。村田が10号を放ち、横浜へ入団した03年から13年連続2桁本塁打。プロ1年目から2桁本塁打を13年以上続けたのは史上11人目で、現役で継続中は15年連続の阿部(巨人)と村田だけ。7月までの村田は70試合で17打点だったが、8月は21試合で18打点。8月の打点はチーム最多だ。