トンネルを抜けた。ロッテ石川歩投手(27)が7回3安打2失点で、7月28日以来となる9勝目を挙げた。7、8月の夏場に1勝7敗と苦しんだが、5回までは無安打に抑える好投で日本ハム大谷に投げ勝った。3位西武が敗れたため、再びゲーム差なしと肉薄。激しいCS争いの中、連敗は避けたい一戦で、2年目右腕が貴重な働きをした。

 自らに課された最後の打者を抑えると、ロッテ石川は感情をほとばしらせた。4-2の7回2死走者無し。日本ハム佐藤賢を3球で追い込み、最後は外に落ちるシンカーで空振り三振。珍しく右拳を握った。「これで終わりと思ったので」。いつもの淡々とした口調で、照れ笑いを浮かべた。

 好投手に投げ勝った。これで大谷との投げ合いは、昨年から2戦2勝。もっとも「意識はしなかった」。何より、本調子ではなかった。直球は140キロ前後にとどまり、シュート回転もあった。「絶対、打たれる」と思っていたが、5回まで無安打を続けられたのは、カーブで緩急を付けたのが大きい。6回2死で陽にソロを打たれ初安打、初失点。さらに連打で2点目を失い、なお走者一塁で中田。ここでも、初球のカーブを打たせ三ゴロ。先輩の存在があった。サブローから「もっとカーブを使った方が良い」と助言を受けていた。「簡単にストライクが取れました」と感謝した。

 4戦4敗だった8月は、いずれも6回以上を投げ自責は3点以下。「内容的にすごく悪いわけじゃない。球も悪くなかった」と気持ちは切らさなかった。「勝ちが付かない。結構、しんどい」と思う時もあったが、こう考えた。勝ちも、負けも、自分に付くのは試合を作っている裏返し、と。「去年よりどうしようもない試合は少ない。少しは成長したかな。でも、まだ信頼度は足りません」と冷静だった。さらに信頼を勝ち取っていく。【古川真弥】