最後まであきらめない! 巨人が2度逆転のシーソーゲームを制した。4番阿部慎之助内野手(36)が、1点を追う3回1死三塁で13号逆転2ランを放てば、9回には同点適時打。先発菅野とセットアッパー山口という巨人を支えてきた投手の失点をカバーする一打で、チームの窮地を救った。上位2チームも勝利している中、チーム一丸となっての劇的な白星で、首位争いに踏みとどまった。

 野太い凱歌(がいか)が、ベンチ裏に響き渡った。「ナイスゲーム!」「よーしっ!」。選手、コーチ、スタッフに加え、背広姿の球団関係者までもが、跳び上がってベンチ裏に駆けてきた。人でごった返す通路で、誰彼構わずハイタッチを繰り返した。二転三転の末に得た重い1勝。お祭り騒ぎの歓声が飛び交うロッカー室から出てきた殊勲の阿部も「すごい試合だったね」と、ほほ笑んだ。

 土壇場に、気持ちで持っていった。1点ビハインドの9回1死三塁。4番阿部が、DeNA山崎康のツーシームをしぶとく中前に運んだ。「(本塁打の)2打席目のイメージで振れば、最低限外野フライを打てるという気持ちがあった」。柔らかくはじき返した。3点リードの8回にマシソン、山口で4失点。剣が峰で喫してはいけない大逆転負けの悲劇から救った。

 オレが打って勝つ。試合前に決めていた。早々に球場入りすると愛飲する微糖の缶コーヒーを手に、通用口のパイプいすにどっかと腰掛けた。1人1人に「おはよう」と声を掛け迎えた。「みんなが打てなくて苦しんでいる。でも今、優勝争いができる位置にいる。野球って不思議だな」。苦みをゆっくり流し込んだ。喉を鳴らし、大きな目を見開いて断固たる決意を吐いた。

 阿部 …。不思議というか、とにかくピッチャーが頑張ってくれているんだよな。(菅野)智之の9勝だって、他のチームなら15勝、いや18勝の価値がある。マエケン、大野、メッセンジャーに小川。ことごとくエースと当たっている。ものすごいストレスだと思う。今日は何とか援護して、勝たせてやりたい。

 第1打席の空振り三振後、ベンチ裏で珍しく荒れた。原辰徳監督(57)は「ああいうものが、あとの本塁打、安打を生む」と、阿部の“異変”を感じ取った。菅野の3失点を帳消しにする3回逆転2ラン。8回に山口が逆転3ランを打たれた直後の同点打。負担をかけてきた2人への恩返しは必然だった。

 残り19試合の逆転4連覇へ。最も大切なものを阿部が示した。原監督は「野球は9人とベンチ入りの全員で戦う。今、力を出すところ。1戦1戦が重くなっていくわけですから。見えない力、どうすることもできない力が、ここからは作用する」と表現した。巨人軍の旗印の下で苦楽を共にしてきた絆を束ね、頂にアタックする。【浜本卓也】

 ▼巨人が逆転勝ちで横浜スタジアムでの連敗を4で止めた。この日は3回に阿部の2ラン、9回に阿部と村田の適時打で逆転。巨人の逆転勝ちは今季23度目だが、リードを2度ひっくり返した逆転勝ちは初。阿部は3回の逆転弾と9回の同点打で今季の殊勲安打が12本。7月までは殊勲安打が5本しかなかったのに、8月以降は先制3本、同点3本、逆転1本の合計7本。8月以降の殊勲安打は坂本と並びチーム最多と、ようやく4番らしい働きを見せてきた。