待ち遠しかったキングのご帰還だ。ヤクルト・ウラディミール・バレンティン外野手(31)が6回、今季1号2ランを放った。左太もも肉離れの手術を受け、4月24日の巨人戦(神宮)以来、約5カ月ぶりの復帰戦。その第3打席で本塁打を放ってみせた。試合には敗れたものの、頼もしい男の復活で、ヤクルトが活路を見いだす。

 大きなフォロースルーで、ボールを押し込んだ。6回1死一塁。バレンティンは手に残る感触を味わうように、右翼上空を見つめた。巨人マイコラスの直球を軽々と飛ばしてみせた。「1打席も無駄にできないと思った。集中して打席に立つように心がけたよ」。今季130試合目。バレンティンにとっては2試合目、5打席目での初アーチだった。

 2軍では調整のため2試合に出場した。直球に差し込まれ、変化球には泳いだ。タイミングが全く合わず6打数無安打。一塁へ全力疾走する機会もなく、守備機会も左前にポトリと落ちた打球を拾って投げただけ。伊東2軍監督を「とても太鼓判は押せない」と心配させた。2軍の打撃コーチの評価も「5割から6割の出来」ということで一致していた。だが、シーズン60発の記録を誇る男の集中力は、予想の範囲を超えていた。

 本番での強さは、この試合を待ち望んでいた気持ちの強さが生んだのかもしれない。「こんなに野球から離れたことは今までなかった。いつも野球のことを考えてたよ」。リハビリ中、チームメートの戦いぶりをインターネットでチェックしていた。左手首には新たに漢字で「友」とタトゥーを入れた。復帰し、友とともに戦う日を待ち望んでいた。

 この日は山田から「グッモーニン」と声を掛けられ「よう、スーパースター」と応じてグラウンドに入った。そんな日常がうれしかった。「状態はここまで来た。戻ってなければ試合には出ていない。自分なりに準備ができた」と胸を張った。試合には敗れたものの、バレンティンの圧倒的な打力は、ヤクルトにとっては今後の光明になる。次こそは、勝利につながる1発にしてみせる。【竹内智信】