ソフトバンクはキャプテン内川が決め、ロッテの下克上を封じた。「2015 SMBC日興証券 クライマックスシリーズ パ」ファイナルステージが開幕。延長10回1死満塁から内川聖一外野手(33)の右前打でサヨナラ勝ちした。苦しみながらも4番を務めた今季。短期決戦の初戦は両軍唯一の3安打とバットが火を噴いた。アドバンテージを含めて2勝を先行し、日本一連覇へ好発進だ。

 最高の笑顔だった。延長10回1死満塁。内川は打球が右中間に転がると、一塁を回り、ベンチから駆けつけた仲間とともに何度も抱き合って飛びはねた。シーズン中にはあまり見られなかった、満面の笑みだった。

 「思わずホッとした。打った瞬間、頭が真っ白になった。シーズン中はチームに迷惑をかけたので、結果を出せてよかった」

 先頭上林が振り逃げで一塁に出た。明石が犠打を決め、代打長谷川が中前打。柳田が3ボールになると、内川はネクストサークルでニヤリと笑った。

 「やっぱりなと思った。好機で打てなかったらという怖さもあったが、打ち勝つためにも無理に笑った。余裕を持っている状況じゃなかった」

 そんな不安は、こん身の一打で振り払った。今季、満塁では18打数8安打の22打点。勝負強さは短期決戦でも健在だった。

 苦悩し続けたシーズンだった。キャプテンで4番の重圧もあり、右打者では史上初となる8年連続打率3割を逃した。9月下旬には工藤監督の配慮で2日間のリフレッシュ休暇が与えられ、2試合を欠場。心の中を整理し、悔しさをエネルギーに変えた。

 「本音を言えば、歴代、誰もたどり着けなかった新記録に到達したかったが、そのためだけにやってきたわけじゃない。現状を受け止めて次に進んでいこう、逆にこれをいいきっかけにしていこうと思った」

 練習が休みだった11日には、3歳の長女の運動会でビデオ撮影にいそしんだ。「日曜日に僕らが休めるなんて奇跡。いいリフレッシュになった」。つかの間の休息でエネルギーを蓄え、初戦から両チーム唯一の猛打賞と爆発した。

 工藤監督も「本当にプレッシャーがかかるところで勇気を持って振ってくれた」と4番の一打を称賛。「負けるとは考えずに強い気持ちで臨むことが何よりも大事。アドバンテージがあると思ってやってはいけない。それはCSの間、言っていきたい」と、気を引き締めた。

 お立ち台では「みなに足を踏まれてスパイクが破れたので、誰がやったか、ゆっくりビデオで見てやろうと思います」と笑いを誘った。「全員熱男」のキャッチフレーズで挑んだCS初戦。プレッシャーをはねのけたキャプテンのハートは、誰よりも熱かった。【福岡吉央】

 ▼ソフトバンクがサヨナラ勝ち。アドバンテージの1勝を含め2勝とした。日本シリーズ出場をかけたプレーオフ、CSで「2勝0敗」は18度目だが、過去17度はすべて日本シリーズに進出している。ソフトバンクは昨年も日本ハムとのファイナルS第1戦を吉村のサヨナラ打でスタートした。プレーオフ、CSのサヨナラ勝ちは今年のファーストS第1戦の巨人以来10度目で、球団別ではソフトバンクの4度が最多。