阪神としては、気にしないといっても、どうしても気になるのが巨人の存在だった。追いかけられる身のつらさでもあるが、自ら崩れていっては話にならない。
しかもデーゲームで早々と巨人が中日に14-1のスコアで大勝していた。わたしも経験があるが、監督として表向きは気にならないとは話しても、それは本音とは裏腹だった。
1回。阪神先発の村上が、9月にスタメンの機会が増えた広島1番・佐藤啓に中越え本塁打を浴びた。だがその裏、すぐに佐藤の犠飛で追いついたから、ある意味、阪神ペースだった。
ただ勝負事には得てして予期せぬプレーが起きるものだ。4回表に中村奨の凡飛をレフト立石が落球するとはだれも思わなかったはずだ。打者走者もよく三進したが、続く坂倉の犠飛で勝ち越しを許してしまう。
この日のネット裏からうかがっていた甲子園は、気まぐれな風向きだった。阪神に味方したかと思えば、1点を追う阪神攻撃の勝負手が結果につながらず“逆風”にもなった。
5回裏1死三塁。阪神ベンチは村上に代えて、代打高寺でまずは同点をもくろんだ。広島栗林に対して1-1から、3球目(空振り)、4球目(ボール)がフォークで2-2。ここで広島バッテリーは裏をかいた。
高寺は栗林のフォークにタイミングが合っていなかった。同じ球で勝負するのかと思いきや、149キロの内角ストレートで空振り三振。後続の近本も左飛で、阪神は対栗林の苦手意識を払拭できなかった。
阪神は6回にも熊谷の失策が絡んで追加点を許した。2つのエラーが失点につながったのは「らしくない」「後味の悪い」戦いだった。まさか巨人に追いつかれるとは想像しなかった。
最終的に阪神が優勝すると、今でも思っている。対巨人の直接対決は1試合、残り試合は3試合多い。戦力的にも普通に戦えば上をいく。怖いのはチームがここで浮き足だってしまうことだ。
(日刊スポーツ評論家)




