阪神金本知憲新監督(47)が“金の卵”を引き当てにいく。ドラフト会議前日の21日、金本監督は都内でのスカウト会議に出席できなかったため、球団は1位候補を7人に絞り、きょう午後までに新監督が映像を見るなどして最終的な1位指名を決定する方針。猛虎改革を託された指揮官は素材重視、競合覚悟という2つの指針を掲げ、未来のスターを真っ向勝負で獲りにいく。

 異例の事態だ。ドラフト前日の全体会議、金本新監督は所用のため出席できなかった。そのため佐野統括スカウトは「きょうの会議で1位候補を7人絞りました。きょうは監督が出席していないので、明日、監督と話をして決めたいと思います」と説明した。

 ここまで県岐阜商の高橋を筆頭に、明大・高山、東海大相模・小笠原を1位最有力候補に挙げてきたが、そこにさらに青学大・吉田、立命大・桜井、大商大・岡田、関東第一・オコエらを加えた中から1位が決定されるとみられる。スカウト側が用意した映像を、きょう午後までに新監督がチェックし、最終会議で決定に至る見込みだ。

 ただ、会議後、都内のホテルに到着し、スカウト陣と合流した金本監督は明確に自らのドラフト方針を打ち出した。

 「即戦力はいるの? そんなにいないでしょう。だったら将来的にエース、クリーンアップ、もしくは1番打者で盗塁王を狙えるような選手をね。コントロールが悪いからとか、打者は変化球打てないとか。そういうのは無視して。入ってから教育すればいいんだから」

 就任会見で話したように、欠点など見ずに、素材重視し、未来のスターになれるスケールの大きな選手をあらためて希望した。

 また、将来性が魅力の152キロ右腕・高橋には4、5球団の競合も予想されるが、金本監督はきっぱりと言い切った。

 「いくときはいきましょう。藤浪をとったように。競合を恐れたら、何もできない!」

 1位候補の絶対数が少ないと言われる今ドラフトでは競合で外れた場合のリスクが高いという声もある。だが、新監督はまったく恐れずに、最高だと判断した素材を指名し、競合すれば自ら抽選のクジを引きにいく覚悟を示した。組閣、編成作業に追われ、新人選手まで目が行き届いていないという金本監督だが、耳にしたことがある名前として岡田、高橋、オコエ、高山、吉田らを挙げた。

 そして、最後に肝心のクジ運についてはきっちりとこんなオチをつけた。

 「くじ運は弱い。本当に当たらん。まあ、当たらん。飛び賞なんかも必ず飛んでる(笑い)。やたらくじ運強い人っているじゃろう? でも、そういう人ってあまり、いい人生を送っていないよね(笑い)」

 右手か、左手かについても「右肩1回、壊れているから。左で引こうかな。腱(けん)も、筋肉も、関節も壊れている」と自虐ネタで笑いを取った。厳しく、明るく、恐れずに。ドラフトもアニキ流で臨む。【鈴木忠平】

 ◆高橋純平(たかはし・じゅんぺい)1997年(平9)5月8日、岐阜市生まれ。梅林中時代は揖斐本巣パワーボーイズに所属。県岐阜商で今春センバツ150キロを2度マーク。今夏は左太もも肉離れの影響もあり甲子園出場を逃したがU18W杯代表で活躍。最速152キロ。183センチ、78キロ。右投げ右打ち。

 ◆高山俊(たかやま・しゅん)1993年(平5)4月13日、千葉県生まれ。小学1年で野球を始め船橋中央シニアでは遊撃手兼投手。七林中では陸上部で200メートル県大会4位。日大三では3年夏の甲子園で日本一。明大では東京6大学新記録を更新する通算131安打。181センチ、84キロ。右投げ左打ち。

 ◆小笠原慎之介(おがさわら・しんのすけ)1997年(平9)10月8日、神奈川生まれ。小1で野球を始め、善行中では「湘南ボーイズ」に所属。中学3年夏にジャイアンツカップで初優勝。東海大相模では今夏の甲子園優勝に貢献。最速151キロ。180センチ、83キロ。左投げ左打ち。

 ◆吉田正尚(よしだ・まさたか)1993年(平5)7月15日、福井県生まれ。6歳から野球を始め、足羽中では鯖江ボーイズに所属。敦賀気比では2度甲子園に出場。高校通算52本塁打。青学大では1年春から出場し、今秋は東都リーグ2部で3冠王を獲得。173センチ、80キロ。右投げ左打ち。

 ◆桜井俊貴(さくらい・としき)1993年(平5)10月21日、神戸市生まれ。多聞東小4年から野球を始める。多聞東中から北須磨に進学し、2年秋からエース。立命大では3年秋に21U日本代表に選出。今秋関西学生リーグ戦で自己最速150キロをマーク。181センチ、82キロ。右投げ右打ち。

 ◆岡田明丈(おかだ・あきたけ)1993年(平5)10月18日、東京都生まれ。大泉第二中の軟式野球部で三塁手として野球を始める。大商大高1年から投手。3年夏は大阪大会8強。大学では1年春に初先発。今春リーグ戦で31イニング連続無失点。最速153キロ。185センチ、82キロ。右投げ左打ち。

 ◆オコエ瑠偉(おこえ・るい)1997年(平9)7月21日、東京都生まれ。ナイジェリア人の父が、サッカー選手になってほしいとラモス瑠偉(FC岐阜監督)の「瑠偉」と名付けた。小1から捕手で野球を始め、小6で外野手に。関東第一では今夏4強。50メートル走5秒96。183センチ、86キロ。右投げ右打ち。