ロッテ今江敏晃内野手(32)が10日、保有している海外フリーエージェント(FA)権の行使を表明した。シーズン終了後に球団と交渉を重ねてきたが、悩んだ末に決断した。球団は「宣言残留」を認めていないため、プロ入りから14年間在籍したロッテを退団することが決まった。海外移籍は考えておらず、今後は国内他球団への移籍を目指す。

 会見冒頭では笑顔も見せていたが、途中で今江は涙が止まらなくなった。「チームメートには何と?」と聞かれてからだ。「今、福浦さんと角中がいたので」と言いかけ、目頭を押さえた。「報告しました」。目を真っ赤にした。

 決め手を聞かれ、「本当に、人生の中でも一番悩んだと思います。悩んだ末、今日の朝、決めました。僕の野球人生も半分以上を過ぎてしまい、これから長くもない。どれだけできるか分からない。野球人として『迷ったら前へ進め』と」と、心中をはき出した。午前8時半に林球団本部長に電話で伝え、正午頃、球場に来てFAの申請手続きを済ませた。

 球団とはCS後に2回、交渉したが、一貫して「白紙です」と言ってきた。提示条件は明かしていないが、今季の推定年俸2億円はチームトップクラス。7月に死球で左手首を骨折し98試合の出場にとどまっただけに、厳しい評価だった模様だ。2度の交渉で多少の歩み寄りはあったが、折り合いはつかなかった。

 もっとも、今江としては金額だけの問題ではなかった。一選手として勝負したい気持ちが、ロッテへの愛情をねじ伏せた。「もう1回、野球人として一から勝負したい思いで決意しました」と強調した。長年、ホットコーナーを守ってきたが、今季終盤には人生で初めて一塁に就いた。チームでの立ち位置が変わっていくのは理解している。その上で新たな勝負を選んだ。

 補償が高いAランクの選手で、手を挙げる球団は限られる可能性がある。ただ、同じ三塁手でFA宣言したソフトバンク松田は移籍は海外のみを選択肢としており、今江の市場価値は高まっている。「声をかけてくださった球団と話して決めたい」。さらに、こう言った。「くすぶっていた自分もある。今までの今江敏晃にはないものを出していきたい」。前へ、進む。【古川真弥】