阪神ドラフト1位の明大・高山俊外野手(22)が25日、契約金1億円プラス出来高払い5000万円、年俸1500万円の最高条件で仮契約を結んだ。交渉会場は、年間表彰NPBアワーズが開催されたホテルのすぐ隣。ルーキーイヤーからのタイトルに思いをはせた。10月26日に手術した右手首も順調に回復。年明けから全開アピールも予告した。(金額は推定)

 褐色に日焼けした端正な顔立ちを崩すことなく、高山は謙虚に言葉を紡いだ。その目にはここまで築いてきた栄光をかなぐり捨て、プロ野球界という険しい道のりを歩む覚悟が見て取れた。

 「金本監督のような選手になれるように一からやっていきたい。1日でも早く阪神の戦力となるのが1年目の目標。長期的には球界を代表する選手になりたい」

 日大三では全国制覇を経験。明大では東京6大学の最多安打記録を48年ぶりに塗り替えた。誰もがうらやむ結果と偉業を残してきたがそれでも慢心はない。阪神は来季の外野のレギュラーが、金本新監督の構想で福留以外、横一線という状況。「そういうところで一喜一憂するタイプではない。自分の出来る精いっぱいをやっていく。入って一生懸命やるだけです」とおごらない。

 偶然にも、隣接するホテルではNPBアワーズが行われていた。自身がなりたいと目標に掲げる球界を代表する選手たちの祭典。高山は表彰の対象にもなる新人王について問われると、一貫していた謙虚な姿勢から少しだけ野心ものぞかせた。

 「どれだけ僕が出来るかわからないですけど、結果的に(タイトルを取ることが出来れば)というか。監督の期待に応えられる選手になるのと、阪神ファンの皆さんの期待に応えられるように」

 全速力で駆け抜けた後に成績やタイトルはついてくる-。そのストイックな精神が、各ステージで最高の結果を残してきた原点だろう。

 現在は今秋のリーグ戦で負傷し、10月26日に修復手術した右手有鉤(ゆうこう)骨骨折のリハビリを続けている。まだバットを振る段階ではないというが、心配は無用だ。頭の中には完治までの青写真がしっかりと描かれている。

 「今は最大限の体のトレーニングと手首のケアをしています。1月(初旬)の入寮までに100%野球をするというのがプラン。野球が出来てない分、けがが明けたら今のうっぷんを含めて全力でアピールしたい」

 アマ球界の星から、プロ野球のスーパースターへ。その先に、スポットライトを浴びる舞台がある。【梶本長之】

<高山俊(たかやま・しゅん)アラカルト>

 ◆生まれ 1993年(平5)4月18日、千葉県。

 ◆球歴 小学1年で野球を始め、船橋中央シニアでは遊撃手兼投手。日大三では3年夏の甲子園で優勝。高校通算32本塁打。明大では東京6大学新記録を更新する通算131安打を記録。

 ◆バットスイング 161・8キロ。松井秀喜氏が現役時代で159キロだった。

 ◆運動神経 3歳から和歌山市内のスイミングスクールに通う。小6時に自由形で「全国ジュニアオリンピックカップ」出場まで標準記録まで0・0何秒差まで迫る実力。

 ◆俊足 七林中では陸上部に所属。200メートルで県大会4位。

 ◆趣味 映画、音楽鑑賞、好物は焼き肉。

 ◆サイズ181センチ、86キロ。右投げ左打ち。

 ▼ドラフト制後に阪神の新人選手が1年目で部門1位になったのは、67年江夏豊の最多奪三振(225)が最初。この後は、69年田淵幸一、80年岡田彰布、92年久慈照嘉、94年藪恵市(恵壹)、01年赤星憲広、07年上園啓史が新人王に輝いた。赤星は同年盗塁王(39)を獲得し、ゴールデングラブ賞も受賞した。