ロングラン交渉で負けん気に火が付いた。巨人菅野智之投手(26)が26日、東京・大手町の球団事務所で契約更改交渉に臨み、2200万円アップの1億3200万円でサインした。3年目の今季は防御率が1・91も、10勝11敗と負け星が先行。約2時間に及んだ交渉の席上で、シーズン終盤の要所で勝てなかった甘さを指摘された。「圧倒」を来季のスローガンとし、最低15勝をノルマに設定。結果を残す。(金額は推定)

 約2時間の長い交渉になった。会見場に現れた菅野は少し上気していた。「こういう機会はない。聞いてみたかった」とテーブルに着き、自分の評価と進むべき方向について、球団側と腹を割って意見を交わした。「期待は思っている以上に高い」。褒められたから思ったのではない。シビアな指摘を受けたから逆に、そう思えた。

 2年連続で開幕投手を務め、防御率は「納得できる」1・91。10勝11敗は「負け越した責任。優勝できない責任」と分かってはいた。白黒に濃淡はない。しかし、勝敗の内訳を突かれた。鋭い目で「自分自身、痛いほど分かっている。大きい試合で勝てない甘さ。成長した姿を見せないといけない」と言った。

 つばぜり合いを展開したヤクルトに勝てなかった。0勝4敗、防御率は6・10と打ち込まれた。CSでは阪神、ヤクルトに白星を献上した。夏場以降は白星が伸びなかった。年間通して働くという、先発投手として最も大切な仕事は全うしたつもり。求められている像ははるか上、ここ一番で勝てる巨人のエースとしての働きだった。「もっと高みを目指していかないと」と決めた。

 慎重な男の根底に流れる原家のDNA。もう黙っていられなかった。「日本一の輪の中心にいる。先頭に立って引っ張っていく。最低15勝。そこは最低ライン。ストレートにもう1回、目を向けて。球種ではなく。相手を圧倒したい」と吐いた。「『圧倒』をスローガンに掲げて頑張ってきたい」と繰り返した。

 鬼気迫る雰囲気を醸し出した。巨人の歴代エースがまとう雰囲気だった。理不尽、じゃない。資質を備えた者にしか求められない期待値だった。菅野が、相手エースとの投げ合いをことごとく制す。巨人が覇権を果たす絶対条件でもある。【宮下敬至】