敵は巨人だけじゃない-。阪神金本知憲監督(47)が26日、東京渋谷区内でトークショーを行った。来季優勝を目指す上で最大のライバルとして今季優勝のヤクルトを挙げた。虎の宿敵といわれる巨人については戦力を警戒したものの、巨人専用ローテなど過剰な特別視はしない方針を示した。就任以来、明るく、熱いメッセージを発してきた指揮官が冷静な一面を見せた。

 東京まで駆けつけた熱烈な虎党、そして、虎ファンを公言しているNMB48山本彩の熱い視線が注がれる中、来季のライバル球団について問われた金本監督は口を開いた。

 「そりゃあ、優勝チームじゃないですか。ヤクルト。戦力でいくなら巨人もそうですけど」

 金本監督はあくまで冷静だった。今年、優勝したのはヤクルト。だから、そのチームを倒さなければ優勝はできない。当然の道理を口にした。明大・高山の獲得に成功したドラフトでも「ヤクルトをやっつけようと思って他の選手と迷ったんですが、ここから(優勝チームを)やっつけようとスカウト会議で一致した」と王者への意識を明かした。

 「巨人」と言えば、ファンは喜んだかもしれない。だが、それはしなかった。他球団への見方について、トークショー後にこう語った。

 「チャンピオンチームだから。そこを目標にしないと。全部ライバルだから、基本的には。巨人も? もちろん、戦力があるし、新監督同士だし。ただ、優勝チームはヤクルトだから」

 王者に敬意を表しつつ、あくまで全チームへの警戒を緩めなかった。巨人についてもスタンスは同じ。例えば、巨人戦を優先した先発ローテーションの編成などは否定した。

 「それは矢野や、投手コーチに聞いてほしいけどそれはないんじゃないかな。終盤になってくれば、あると思うけど。無理なローテはしなくていいんじゃないかな」

 巨人戦だけは絶対に勝て! という遺伝子が猛虎には受け継がれてきた。近年でも巨人をターゲットに先発ローテを組み替えるなど、明らかに他の4球団よりも特別視してきた。ただ一方で巨人とは互角の勝負をしながらも、優勝がつかめなかったこともあった。一昔前には巨人戦の直後のカードで勝てない“燃え尽き症候群”もささやかれた。

 1勝は1勝。目標は何なのか-。それを常に忘れない冷静な勝負師の一面をのぞかせた。【鈴木忠平】