去就に揺れていた広島黒田博樹投手(40)が8日、現役続行の意思を固めた。広島鈴木清明球団本部長(61)にこの日の午前、電話で伝えた。ファンの熱意や、あと7勝に迫る日米通算200勝、さらに前田健太投手(27)のメジャー挑戦など多くの要素が絡み、現役続行のモチベーションが高まったとみられる。男気(おとこぎ)を発揮し、来季も投手陣の中心となる活躍が期待される。

 再びマウンドに戻ってくる。広島黒田はこの日午前、鈴木本部長の携帯電話を鳴らした。短い言葉に覚悟を込める。「来年もやります」。広島が、全国のファンが待ちわびた現役続行の意思表示だった。シーズン終了後から熟考した末に、41歳となる来季も広島でプレーする意思を固めた。

 結論に至るまでに、気持ちは揺れ動いていた。11月27日には「考えることは考えた」と話していたが、同30日になると一転。「今年は野球人生でも最高のモチベーションで入った。燃え尽きた部分はある。これを超えるのは難しい」と逆に振れた。決断のカギに「モチベーション」を掲げ、続行の理由を探していた。

 鈴木本部長は、広島を代表して黒田に思いを伝えた。スケジュールが合わず、前日7日夜に11月下旬の帰国後、初めて膝をつき合わせた。2時間半にわたる交渉で「魔法の言葉はないけど、思っていることをすべて出した」。年俸の提示はせず、心に訴えた。「世の中の人はみんなやってほしいと思っている」。代わりのいない存在と訴えた。

 思いは再び届く形となった。ファンの熱意や、エース前田のメジャー移籍が確実な状況、20代がほとんどの若手投手陣、あと7勝に迫る日米通算200勝…。多くの要素から、黒田はモチベーションを探し出したようだ。「ホッとしたというのと、よしっという気持ち」と鈴木本部長はファンの思いを代弁した。

 25年ぶりの優勝を狙う来季に向け、最高の“補強”となった。松田オーナーが「投手陣の核が出来る。補強も黒田を中心にどこが足りないかを見ていける」と話せば、鈴木本部長も「成績だけではない。若手の手本になる。中心となってやってほしい」と期待。男気の波及効果も大きい。

 来週中にも契約更改を行う予定。今季11勝8敗、防御率2・55の成績以上に与えた影響は大きく、推定年俸4億円からアップは確実だ。鈴木本部長も「キャリアを見ても恥ずかしくない金額を提示する」と敬意を表した。1球の重みを感じながら、黒田は再びマウンドに立つ。【池本泰尚】