テグさん流で、まくってみせるぞ-。中日はキャンプイン前日の1月31日、沖縄県恩納村の宿舎で全体ミーティングを開いた。谷繁元信監督(45)は最初の実戦として、11日に1、2軍のほぼ全選手を集めて紅白戦を行うプランを披露。真の「競争心」を生むのが狙いだ。スター不在、低い下馬評からアジアを制したサッカーU-23日本代表のような競争を促して、3年連続Bクラスからの大逆襲を狙う。

 1、2軍の全選手とコーチ、スタッフ総勢約130人。約45分の全体ミーティングの最後に、今季から専任となる谷繁監督が前に立った。キャンプのテーマを訴えかけた。

 「とにかく、自分がどうやったらうまくなるのか、どうやったらチームが強くなるのかを考えながらやろう。元気、活気がある強いドラゴンズを作ろう」

 異例の策を明かした。1、2軍合同の“大”紅白戦だ。11日に1軍キャンプ地の北谷球場に2軍を呼び寄せる。大人数のため9イニング以上におよぶ可能性もあるという。これが最初の実戦形式。指揮官には明確な考えがある。

 昨年、通算3021試合出場の大記録を樹立した名捕手・谷繁の礎を築いた記憶をひもといた。「今考えたら、僕も若いとき、紅白戦とかチーム内の競争を意識していた。でもレギュラーになって紅白戦の意味が薄らいでいった。思い出すと、たとえば僕が紅組だったら白組のもう1人のライバルを絶対打たさない、とか考えていた」

 競争心。ライバル心。耳慣れた言葉だが内実が伴わないこともある。監督は常々、若い選手の「なれ合い」にも見える関係に違和感を覚えていた。ライバル同士が技術論、精神論を共有することは悪いことではない。ただ監督が若い選手に伝えたいのは、燃えたぎる、ヒリヒリした「闘争心」とも置き換えられる。

 たとえば捕手。昨年、最多64試合に出た杉山は2軍。松井雅、桂、新人木下らがいて横一線だ。遊撃はエルナンデスや遠藤がいるが即戦力新人の阿部が入った。必勝リレーの枠は誰か、先発ローテ枠は…。監督は先日「決まっているポジションはほとんどない」と言った。これが本心だ。

 サッカーU-23代表も戦前の評価は高くなかった。だが強豪イラクを蹴散らしてリオ五輪行きを決め。決勝の韓国では2点差を逆転した。エース不在、スターもおらず苦しんだ世代。手倉森監督は最後まで競争原理で選手をあおった。イレブンはそれに応えた。

 3年連続Bクラス。4番候補ビシエドや抑え候補のハイメら効果的な補強をしたが、今年の下馬評も決して高くないとされる。「考えながらやろう」。この言葉の意味を選手が考えるキャンプになる。【柏原誠】

<谷繁監督のキャンプ前日ミーティング>

 ◆14年 兼任で就任した新監督の所信表明はわずか30秒だった。「日本一を目指してやっていく。そのために同じ方向を向いてくれ」と、シンプルにまとめた。

 ◆15年 直前に感染性胃腸炎やインフルエンザなどで離脱者が続出。チーム内に緊迫ムードが漂う中、ミーティングでは「心技体、すべてレベルアップしてほしい。そして継続してほしい」と訴えた。