巨人ドラフト1位の桜井俊貴投手(22=立命大)が8日、初めてのフリー打撃で堂々の投球を披露した。坂本、亀井を相手に48球投じ、安打性の当たりはわずか8本。結果に加え、マウンドに刻まれた1本の線が好投を証明した。新人時代の菅野と同じ、捕手へ向かって真っすぐ伸びたスパイク痕が残っていた。

 素直に、真っすぐに、力を伝えた。フリー打撃開始から16球目。スピンの利いた外角高めの直球を投げ込むと、坂本のバットは空を切った。桜井は「あんまり力を入れてないのに138キロ出たのかと思いました。ストレートは通用すると思いました」。自信につながる投球内容だった。

 自画自賛するように、直球の安定感は抜群だった。48球中ボール球は12球で、そのうちの8球が変化球。ほとんどの直球は捕手が構えたミットに吸い込まれていった。坂本は「真っすぐと分かっていても、当てられなかった」と、驚きの表情で空振りした1球を振り返った。視察した広島吉年スコアラーは「フォームのバランスが良い。回転が良いから、球がたれない。質の良い真っすぐだった」と警戒。わずかな時間で、他球団にも印象を残した。

 結果だけではない。マウンドに残る1本の線も好投を物語った。投球時、マウンドには軸足を引きずる線ができる。大半の投手は、右腕なら右斜め前方へ曲線を描く。だが、桜井の痕はホームベース方向に真っすぐに伸びた。13年2月1日、新人菅野の初ブルペンでも同じ現象が起きていた。この特徴は杉内、ロッテ涌井といった球界を代表する投手に出る傾向でもある。桜井は「意識はしていないけど、体重が一塁側にいかないようにはしている」と言う。自然と一流の動作ができていた。

 計画通り、直球を軸にカーブ、スライダー、チェンジアップ、スプリットの全球投げ込んだ。見守った高橋監督は「全体的にコントロールがまとまっていた。直球の質も良かった。味方打者が相手だから抑え気味だったと思うし、対外試合になってみてだね」と言った。首脳陣にも好投手という“痕”を十分に残した。【細江純平】