巨人ドラフト1位の桜井俊貴投手(22=立命大)が“1人時間差投法”を操り、上々の実戦デビューを飾った。12日、今キャンプ初の紅白戦に先発。2回無安打無失点で2三振を奪った。フォームに工夫を凝らして打者のタイミングを外すなど、最速142キロと剛球ではないが、それでも抑える実戦向きの投球術を披露した。開幕先発ローテーション入りへアピールした。

 桜井が、主砲のタイミングを外した。初回を3者凡退に抑え、迎えた2イニング目。先頭の4番ギャレット・ジョーンズ外野手(34=ヤンキース)に対し、絶妙な「間」を使った。同じテンポで投げず、左足を地面に着けるまでの時間を変える球を織り交ぜた。見る者は、ほぼ気付かないであろう微妙な差。だが、打者には大きい。8球目、ボール球のチェンジアップで空振り三振に仕留めた。

 桜井 マウンドで打者のタイミングを見て、自然とやっています。普段通り投げられたと思います。

 ポリシーがある。「球速より打者にいかに速く見せるか」。プロ入り前の最速は150キロだが固執はしていない。この日も最速142キロだが、片岡は「ボールの出どころが見にくい分、速く見えた」と証言した。坂本、長野も直球に詰まった。見づらい通常フォームに、ギャレット限定で見せた1人時間差投法。「高校時代からやってることなので変わらない」。フォームを微調整しても制球は乱れず、無四球と安定していた。

 球界でも珍しい“間”を持つ。4日のブルペン。クイックで直球を投げた時、始動からボールが捕手のミットに収まるまでのタイムは1・15~1・25秒。対してチェンジアップは1・10~1・15秒と直球を上回った。直球はチェンジアップより約20キロ速く、一般的クイックは直球の方が速い。

 だが桜井の持つ特性が逆転現象を起こした。「意識はしていないが、大学の時にチェンジアップの方が腕が振れているといわれた。その分フォームが早いのかもしれません」。この日は封印したが“直球より速いチェンジアップ”も武器とする。

 他にもタイミングを外すすべはあるが「詳しくは企業秘密です」と隠す。高橋監督は「制球はいいし、落ち着いていた。次どれくらい投げるか楽しみ」と評価。開幕ローテ入りへのアピールに成功した。変幻自在の投球の間。引き出しは、まだまだある。【細江純平】

 ◆桜井俊貴(さくらい・としき)1993年(平5)10月21日、神戸市生まれ。小4から野球を始め、投手一筋。北須磨では秋の兵庫県大会ベスト8が最高。立命大では通算28勝を挙げ、3年秋にプロと混合チームのU-21日本代表に選出された。181センチ、82キロ、右投げ右打ち。家族は父、母、姉。

 ◆趣味 テレビ鑑賞。特に関西の深夜番組が好きで、ABC朝日放送の『今ちゃんの「実は…」』がお気に入り。深夜のため、ビデオ録画する。

 ◆性格 何事にも動じないタイプで、緊張はほとんどしない。4年秋に出場した明治神宮大会、宮崎キャンプ初日でも「いつもと変わりませんでした」と平常心。

 ◆絵馬 宮崎キャンプ初日、絵馬には「2ケタ勝利」と今季の目標を記した。

 ◆憧れ 菅野を尊敬しており、弟子入りを志願している。