復活へ大きく前進した。ソフトバンク松坂大輔投手(35)が16日、右肩故障離脱から272日ぶりに打者と対戦した。城所、釜元の左2人に対し打撃投手を務め、35球で安打性は3本。代名詞のスライダーで空振りも奪った。その後は今季初めて非公開でブルペン入りし、35球の調整。登板前の38球と合わせ108球。球数も内容も調整ペースが上がってきた。

 予告通り松坂がスライダーを投げると城所のバットが空を切った。城所が「バリ真横に曲がる。教えてもらってもエグかった」と驚いた。2人目釜元も予告スライダーに手が出ず見逃した。「スピードもあるし、大きいカットボールみたい」と脱帽。松坂の代名詞でもある、大きく曲がるスライダーが復活した。

 「打者に対しては久しぶり。今日は7割くらい。もうちょっと力を入れて投げてもよかった」。昨年8月に右肩を手術。打者との感覚を思い出すために、カーブ、チェンジアップ、シュートとあらゆる変化球も試した。釜元に3球投げた後には、目の前にある防球ネットをどかした。松坂は「ネットが気になったので、どうしても球が浮いちゃう。どかした方が低く入っていける」と、身の危険よりも思い通りに腕を振ることを優先。前日15日に佐藤投手コーチから教わった下半身の使い方も意識した。

 打撃投手後にはブルペンへダッシュ。追いかける報道陣を見ながら、申し訳なさそうな笑顔でドアにカギをかけた。「少しぐらい集中して投げたかったので。直球をどうにかしたかった」。今キャンプ初の非公開練習で35球投げ、フォームの修正や打撃投手でつかんだ感覚を体に覚え込ませた。

 この日は打撃投手前のブルペンも合わせ108球。前日15日も室内でキャッチボールを多めに行っている。松坂は休み明け(18日)の肩の状態を見て今後のプランを決めるつもりだ。B組まで足を運んで見守った工藤監督も「ボールの走りはまずまずだった。(肩の)張りもブルペンと打撃投手では違う。いつも言うように状態が上がったら必ず落ちる」と、焦らせるつもりはない。

 今後はブルペンで打者に立ってもらうなどして調整を進めるつもりだ。リハビリ担当も打撃投手ができればブルペン連投も解禁できると考えている。今後は松坂が思い描く通りに、調整を進めていく。【石橋隆雄】

<松坂の今キャンプ>

 ◆1日 捕手を座らせて50球のブルペン投球。「気温が低かったので気をつけながら投げました」。

 ◆5日 2度目のブルペンで39球。終盤には「ぐわっ」と声を出しながら迫力のピッチング。「筋トレと一緒。踏ん張るときに声を出す」。

 ◆7日 3度目のブルペンではマメをつぶしながら投げ続け、捕手を立たせ95球を投げた。途中からテープも巻き「あそこで終わるのはもったいない」と好調さを実感して続投。

 ◆11日 今キャンプ初のノースロー調整。キャッチボールも行わず、短いダッシュやランニング、筋力トレーニングで汗を流した。「しっかり休ませた方がいい」と意義を強調。

 ◆16日 右肩故障後初めて打者と対戦。昨年5月20日ウエスタン・リーグ、オリックス戦以来、272日ぶり。