中日高橋周平内野手(22)が覚醒の予感だ。楽天とのオープン戦(北谷)で4回に左翼越えのソロ弾。左腕森の失投を見逃さず、逆方向に完璧に打ち返した。キャンプでの実戦全5試合で安打を放ち、この日も2安打で打率4割3分8厘。森野と争う開幕三塁の座へ、まっしぐらに突き進んでいる。

 カウント3-1。楽天の左腕森が投げた外角高めの140キロに逆らわずバットを出す。強振しなくても逆方向にグングン伸びた。

 「いい感じで打てたので本塁打かなと思った。カウントがよかったし、たまたまあのコースに来たのであっちに飛んでくれた」。3ボールでも四球狙いはなし。好球必打。ずっと課題にしていた攻撃的な打撃、そして失投を1発でしとめる打撃をまた実践した。

 紅白戦にはじまり、練習試合2試合、オープン戦2試合の成績は16打数7安打の打率4割3分8厘。うち二塁打が3本、本塁打が1本。過度に結果を求めようとせずに自分の打撃スタイルを固める段階でも、数字がともなっている。

 11年ドラフト1位も今年が5年目。大学に行った同学年の選手たちがプロに入ってきた。打撃の指導を受けてきた土井正博臨時コーチに今オフ、こう伝えられた。「自分が今年大学を出たルーキーと思いなさい。プロに即戦力として入ってきたんだから、過去は忘れよう。そいつらより力は数段上だよ。自信を持ってやりなさい」。

 プロの1軍レベルで壁にぶち当たり、そのたび苦しみ、努力してきた。4年間、大学では得られない経験をしてきた。「勝負の年」と意気込む今年は「結果を求めすぎず自分の形で打つ」を貫こうとしている。下半身を強く意識して軸を作り、ボールを呼び込む形が自然と打席でできるようになってきた。

 土井臨時コーチは「すごくいい状態。このままつかんでほしい」と目を細める。谷繁監督も「いい形で左から2本打った。今やっていることを出していた」と認めた。今季の三塁争いは森野との一騎打ちの様相。だが、現時点でのアピール度は高橋が上。「自分なりにいい方向でやってきた。継続できているのがいいと思う」。キャンプ終盤、若武者の勢いが一気に増してきた。【柏原誠】

 <高橋の4年間>

 ◆12年(41試合=打率1割5分5厘、2本塁打、3打点)球団高卒新人では88年立浪以来となる開幕1軍も定着できず。6月17日オリックス戦で寺原から放ったプロ1号は97年森野以来、球団15年ぶりの高卒新人アーチだった。

 ◆13年(66試合=打率2割4分9厘、5本塁打、27打点)シーズン後半から三塁に定着。8月の阪神戦では球団最年少19歳6カ月で逆転満塁弾。

 ◆14年(61試合=打率2割5分7厘、6本塁打、14打点)遊撃のレギュラー候補としてキャンプインも打撃不振のためプロ初の開幕2軍。7月中旬にようやく1軍昇格。

 ◆15年(51試合=打率2割8厘、4本塁打、18打点)背番号3に変更。開幕3戦目に森野が故障離脱し三塁で出番も増えたが、打撃は低調。6月に2軍落ち。42三振は自己ワースト。