ひと振りでビッグサプライズを起こした。楽天ドラフト3位の茂木栄五郎内野手(22)が、日本ハム大谷翔平投手(21)から決勝の中前適時打。チームの首位奪還と球団通算700勝を決めた。球界を代表する右腕との初対戦で3打数2安打のマルチ安打を記録。開幕から13試合連続先発中のゴールデンルーキーが大仕事を果たし、初のお立ち台に上がった。

 怪物右腕を打ち抜いた。4回1死三塁。茂木のバットが大谷の初球、外角低めに落ちる136キロフォークをはじき返した。150キロ超えの直球を狙った始動から両腕を伸ばし、地をはうゴロで二遊間を破った。「絶対に外の直球で来ると思った中、コースの甘い変化球が来た。バットを一番伸ばせるところでした。1打席目のヒットでいいイメージを持って、怖いもの知らずでした」。2打席連続安打で「茂木栄五郎」の名を全国にとどろかせた。

 新人離れした思考法が決勝打を生んだ。2回の1打席目、初めて対峙(たいじ)する右腕の148キロ直球を中前へ運んだ。カウント1-0からのファーストストライク。ひと振りで仕留めた。「大谷選手の一番いい球はストレート。1打席に必ず1回は投げてくる。一番いい球を、1球で仕留めればいいと思ったんです」。相手のベストピッチをあえて狙い、打ち砕いた感触が2打席目の思い切りを呼び込んだ。真っ向勝負。「大谷」の名を問題にしない強い心を持っていた。

 自分の感覚を大切にする。使用するミズノ社製のバットは、ヘッドが直角で重心が先端寄りにある「プロでも、使っている選手は数えるほど」(メーカー担当者)のモデル。強い遠心力で長打を生む一方で、コントロールが難しい。大学時代から使用する1本を「難しいと思ったことはありません。振り抜きやすく、長打を打てる。自分は長打を打ちたい。そのためにどう打つか、バットをどう使うかを考えています」と平然と使いこなしてきた。グラブのポケット部分は、広げてつかむ動作を重視して徹底的に柔らかく調整。調子がいい時も悪い時も同じ道具を使い続ける。どんな時も「自分」を貫く。

 2安打を放っても反省を忘れない。「タイムリーの場面は、もっときちっとしたスイングで終われればよかった」と悔やんだ。どこまでも貪欲なルーキーが、楽天の快進撃をさらに加速させる。【松本岳志】

 ◆茂木栄五郎(もぎ・えいごろう)1994年(平6)2月14日、東京生まれ。桐蔭学園-早大からドラフト3位で楽天入団。大学通算10本塁打のパンチ力と、三塁、二塁、遊撃をこなす守備力が武器。開幕1軍から全13戦に出場し、打率2割8分、2盗塁。171センチ、75キロ。右投げ左打ち。推定年俸1200万円。