あとアウト1つだった。ヤクルト石川は9回2死三塁、宝刀スクリューを長野に捉えられた。完封を逃す左中間への適時打を見つめ、三塁走者の本塁生還に唇をかんだ。ここで降板。ベンチでチームの勝利を見届け、お立ち台に上がっても笑顔はなかった。「完封したかったですけど、チームが勝てば何でもいい」と言い、あふれる感情を押し殺した。

 何が何でも勝ちたかった。前回登板の22日中日戦は3回途中、屈辱の7失点で降板。この日は生命線である低めのコントロールに細心の注意を払った。捕手の中村は「両サイドを丁寧に投げていた」。3点リードの8回先頭では、投手強襲の打球にグラブを出してキャッチ。勝利への意地があった。

 36歳。周りを見れば、後輩だけになった。尊敬する元中日の山本昌氏は昨季限りで引退した。「野球をやりたくても出来ない人もいる。だから1年も1日も無駄に出来ない」と毎試合を戦っている。5安打1失点で、自身にとってホームゲーム10連勝を飾った。チーム最年長として、ふがいない姿は見せられない。【栗田尚樹】