5月は大逆転劇でスタートした。阪神が7回に打者10人の猛攻をみせるなど、DeNA相手に今季初の5点差逆転勝利。ミラクル劇のV打は大和外野手(28)のバットから。同点の8回に右前適時打を放った。新戦力、ベテラン、大和ら中堅の力を結集し、チームは貯金1。順位は4位のままだが、首位広島まで2ゲーム差と詰まっており、5月反攻に転じる。

 大和の一振りで、阪神の大逆転劇が完結した。同点で迎えた8回2死一、三塁。カウント1-2と追い込まれながら、DeNA須田の外角高め直球をライナーで流し打った。「今日負けたら、すごく嫌な雰囲気になるところ。勝てて良かった」。前日4月30日DeNA戦はあと1歩反撃及ばず。負ければ借金生活に陥る一戦で、7回に若手とベテランがかみ合い、1イニング5得点で同点。最後は今季得点圏で9打数無安打だった男が、意地の勝ち越し打を決めた。

 1年前の衝撃を忘れはしない。オープン戦からシーズン開幕直後にかけ、凡打するたび観客から大声でヤジられた。「それまでヤジられたことがなくて…。つらかったですよ。試合に出たくない、とさえ思いました」。自然とプレーが縮こまる。そんな時、YouTubeで偶然目にした「昔の自分」に心を突き動かされた。

 「1軍で出始めた5、6年前の動画が出てきたんです」。ナゴヤドームの中日戦。一塁走者の大和は左腕小林正のけん制球に動じず、大きなリードで攻めていた。「当時は常に走ってやろうと思っていた。今はポジションを奪われる怖さを知ってしまったけど、怖さを知らなかった時の気持ちをもう1度思い出さないと」。今季は二塁争いで西岡に敗れ、中堅争いでは横田、江越の台頭を許して開幕。それでも「結果さえ出せばプレーできる。チャンスが来ると思って準備してきた」と腐らなかった。

 金本監督は「ああいうところで決められる勝負根性を持っている」と3安打2打点の大和を褒めたたえた後、ミラクル勝利の重みを感じ取った。「大きな1勝でしたね。まだ順位は関係ないけど、借金というと気分は悪い。良かったですね」。前日まで打線は下降気味だったが、若手とベテランが線となり、5点ビハインドをはね返した。【佐井陽介】