黒田の金言を胸に-。首位広島は今日3日から2位巨人と敵地で3連戦を迎える。相手エース菅野の先発が予想される3戦目は、今季初先発となる九里亜蓮投手(24)に託された。黒田博樹投手(41)のアドバイスを転機に、開幕2軍スタートからはい上がってきた。人生初の東京ドームで、チームの堅首と先発生き残りをかける。

 九里はひと汗流すと、サングラスを外した。約18メートル先にいる畝投手コーチにグラブを突き出すフォームから力を入れたキャッチボールを繰り返した。267日ぶりの先発マウンドへ、着々と準備を進めた。

 「特に気にしてはいません。2軍でずっと先発で投げてきましたから。先発に対してはずっと強い気持ちを持っていましたが、やってきたことを継続して、自分が持っているものを出したい」

 高ぶる気持ちを抑えながら、言葉を紡いだ。1年目の14年、開幕2戦目にプロ初先発初勝利の華々しいデビューを飾った。だが、その後は苦しいときを過ごした。昨季は1軍登板わずか7試合。15年8月12日ヤクルト戦の先発を最後に1軍マウンドから遠ざかる。

 今年1月、自主トレを行った米国で先輩黒田に助言を求めた。「自分の中で迷っていたことに、答えを出していただいた」。昨季までは投球時、左手を体の前から回すように引いていた。制球が安定せず、投球後に体が一塁側に流れる悪癖につながった。今季からは左手を打者側へ突き出してから引く黒田スタイルにリニューアル。「球威は上がった。(球が)指にかかっている感覚もある」。ファームでは5試合で2勝2敗、防御率1・86。1軍では2試合6回2/3を投げ無失点を継続する。手応えは結果に表れている。

 シーズン序盤ながら、今回の巨人3連戦は首位攻防戦。巨人戦は通算4度目の登板も、東京ドームは野球人生初となる。「とりあえずワクワクしています」と少年のような笑顔を見せた。投げ合う相手はエース菅野。「気持ちだけは負けないようにしたい」と表情を引き締めた。こいのぼりが揺れる5月5日。はい上がってきた右腕が、球界の盟主を相手に躍動する。【前原淳】