男気(おとこぎ)右腕が帰ってきた。頸部(けいぶ)神経根症と右肩痛のため8日に出場選手登録を外れていた広島黒田が阪神戦で戦列復帰。毎回走者を背負いながら、6回7安打1失点で踏ん張った。

 2回に右すねに打球が当たるアクシデントにも負けなかった。「あのくらいしょっちゅう当たっている」と痛みを表情に出さず、マウンドに立ち続けた。自らの近くに飛んできた打球に再三右手を出し、闘志をむき出しにして投げた。

 4回2死三塁。高山の打球を止め、素手でボールを拾った新井の一塁ベースへのヘッドスライディングもわずかに届かず、先制点を許した。だが、失点はこの1点だけ。13日ぶりの先発で勝利を願って、119球を投げ抜いた。黒田の執念が、終盤の同点、勝ち越しを呼び込んだ。

 首のしびれとは、もう7年の付き合いになる。ドジャース時代の09年8月15日ダイヤモンドバックス戦で、打球が右側頭部を直撃した後遺症が原因。今でも「あれは怖かった」と振り返る。マウンドに倒れ緊急搬送されるほどの状態でも「打球はどこだ?」と声を振り絞った。チームの勝利がすべて。この日もそうだった。「チームが勝つのが一番。こういう展開で勝てたことは大きい」。日米通算198勝はならなくても、5時間5分の死闘を制した喜びに浸った。【前原淳】