阪神鳥谷は1発で反撃ムードを高めた。4点を追う6回1死一塁。2番手村中に1ボール2ストライクと追い込まれながら、外角141キロ直球を押し込んだ。難しいボールを左翼席最前列まで届かせ「なんとかストライクが来たら、と思っていた。まぐれです」。8戦ぶりの1発となる3号2ランで激戦に導いた。

 不振から脱出しようと日々、汗を流す。試合開始3時間前。野手練習が始まるメイングラウンドに、鳥谷の姿はなかった。上本、今成と3人、投手練習組に交ざって室内練習場へ。20分間の打ち込みを敢行した。「なんとか自分で(修正を)やっていこうと思って」。フリー打撃から外角いっぱいのボールを慎重に見極め、「これはストライクかな」と確認する場面も。最後は5球連続で右方向に力強く打ち上げ、浜中コーチから「5連発やな」と声をかけられ表情を和らげた。

 8番まで打順を下げて4試合目。片岡打撃コーチは「ホームランにしても(9回の)センターライナーにしても、真っすぐに振り負けなくなってきた。状態は良くなってきている」と分析する。2打席連続三振の後に放った1発は、浮上へのきっかけになるかもしれない。鳥谷は「シーズンは長い。自分が納得する形で打席に立てるようにやっていきたい」と力を込めた。

 試合は9回サヨナラ負けで幕を閉じた。「諦めずに最後までやることが大事。それを続けていたい」。狭い神宮の左翼フェンスをギリギリで越えた1発。もがき苦しみながら、はい上がろうとする姿に、野球の神様がほほ笑んだのかもしれない。【佐井陽介】