育成出身の阪神原口文仁捕手(24)が、侍ジャパンのメンバーにリストアップされていることが30日、分かった。日本代表の小久保裕紀監督(44)が強い関心を示し「捕手は常に探している」と明かした。今日31日「日本生命セ・パ交流戦」が開幕。楽天戦から臨むパ・リーグとの戦いも、虎のシンデレラボーイが攻守でカギを握っている。

 交流戦開幕を前に、原口のやる気をさらに刺激する朗報があった。3桁の背番号からはい上がった捕手に、侍ジャパンが熱い視線を送っている。28日巨人戦(東京ドーム)の試合前。解説の仕事で球場を訪れていた小久保監督が、バットを持つ原口に近づいた。ひと言、ふたこと、言葉を交わすと、その後は矢野作戦兼バッテリーコーチと談笑。その目は原口の鋭い打球を追っていた。

 小久保監督 これだけの短期間でどうやってここまで来られたのか聞いた。ケガが多かったみたいだけど。矢野コーチにもそういうところを聞いた。

 プロ入り7年目。12年に腰痛で戦線を離脱すると、同年オフに育成契約選手になった。それから4年。4月27日に支配下登録されると大ブレークの幕が開いた。ここまで27試合に出場し、打率3割9分、5本塁打、18打点。5番にも抜てきされるなど待望の“打てる捕手”が出現した。小久保監督もすぐに原口の情報を収集。さらに、メンバー入りの可能性についても明かした。

 小久保監督 打っているよね。もともと打撃はよかったみたいだけど。シーズンの残り試合で体の強さを示してくれたら。捕手は常に探している。

 今日31日からセ・パ交流戦がスタートする。原口にとっては大半の打者が初対戦となる未知の領域。楽天、西武、ロッテ…。パの強打者が、次々と虎投に襲いかかってくるが、22試合連続で先発マスクをかぶる女房役は冷静だ。

 原口 これまで通り、普通にやるだけです。(振ってくる打者が多いが)しっかりバッターを見ながら、それをうまく利用していきたい。

 これまで育成出身の侍ジャパンは巨人山口がいるが、捕手では誰もいない。現状、侍ジャパン候補捕手は楽天嶋が左手首骨折で長期離脱中。ヤクルト中村も打率1割台に低迷する。虎の正捕手として原口がシーズンを全うすれば、そんな夢物語も現実味を帯びる。甲子園8強進出の帝京3年夏に高校日本代表入り。その後、回り道しながらも地道にここまで来た。シンデレラストーリーにはまだまだ続きがある。【桝井聡】

 ◆今後の侍ジャパン 日本シリーズ後の11月に強化試合を予定。17年3月に開催される第4回WBCに備え、2月以降に代表合宿などを行う見込み。メンバーは、選考対象となる選手を随時ロースターに入れて公表。今年2月21日時点でロースター入りしている捕手は楽天嶋、西武炭谷、広島会沢、オリックス伊藤、ヤクルト中村、西武森の6人。このうち3月の台湾戦には炭谷と中村が選出された。

<原口この1カ月>

 ◆3階級特進デビュー 開幕時は育成契約だったが、4月27日に支配下登録されると即出場選手登録。あまりに急な事態のため、94番の輝流デザインユニホームが間に合わず、当日の巨人戦(甲子園)は山田2軍バッテリーコーチの背番号82で臨んだ。代打で初出場し初安打まで記録した。

 ◆初ものずくめ 4月29日巨人戦(甲子園)では初スタメン。5月4日中日戦(ナゴヤドーム)で初本塁打を記録。19日中日戦(甲子園)で初サヨナラ打。

 ◆連続完封 マスクでも5月4日から6日ヤクルト戦(甲子園)まで46年ぶりの3試合連続完封勝利に貢献。

 ◆クリーンアップ 5月11日巨人戦(甲子園)で5番捕手として出場。10年の城島以来だった。

 ◆月間MVP候補 5月はここまで打率4割、5本塁打、17打点と大活躍。育成から昇格翌月のMVPとなればプロ野球初。