楽天の藤田一也内野手(33)が「日本生命セ・パ交流戦」広島戦の延長11回2死一、二塁から中前にプロ初のサヨナラ打を放った。9回からの途中出場ながら、土壇場で結果を残すのが、経験豊富な藤田ならでは。円熟の集中力を発揮した殊勲打だった。チームは交流戦を7勝5敗とし、5月17日以来の5位に浮上した。

 打球が中前に弾み、二塁走者枡田の生還を見届けると、藤田は猛ダッシュで左翼スタンドに向かった。「いつも内野にみんな集まるからファンが見られないんで。近くでやったほうが見やすいし、選手のみんなも運動不足だろうから走らせようと思った」。26日ぶりの最下位脱出を決める一打を放った殊勲者は、チームメートにもみくちゃにされながらファンと歓喜の瞬間を分かち合った。

 熟練の集中力を発揮した。相手先発が左腕のためスタメンを外れたが「梨田監督は必ずチャンスをくれるので、しっかり準備はしていた」。9回2死、代打で登場し四球選んだ。延長11回2死一、二塁とサヨナラの場面は「(枡田)慎太郎と後藤さんがつないでくれたこのチャンスを、絶対にものにしてやろう」と気合を込めたが、打席では冷静だった。広島中崎の初球、内角速球を見逃し。「こんないいボールはもう来ない」と流し打ちを意識し、1ストライクから2球目のシュートを完璧に捉えた。

 交流戦の打率は3割5分7厘だが、状態がいいわけではない。交流戦直前には「今、バッティングはどん底ですね」と苦笑するほど、不振を極めていた。7日のヤクルト戦では試合前に特打を行うなど、試行錯誤して調子を上げてきた。その日から4試合連続で複数安打を記録しても「今は打数が少ないから打率の上がり幅が大きいだけ。それだけ下げ幅も大きいんで、あまり欲張らずに、今できることをしっかりやりたい」。信念を崩さずに準備を続けてきたことが、大事な場面で勝負強さを生んだ。

 1軍野手では後藤に次ぐ2番目の年長者。梨田監督は「使い続けるために、休ませることも必要」と配慮するが、藤田は「若い選手が出てきていい刺激になるが、まだまだ負けない」と意気込む。若手とベテランが力を集結させた勝利を、チーム浮上のきっかけとする。【田口元義】