ハマスタが育んだスラッガー、DeNA筒香が初めて横浜スタジアムに立ったのは10年前。横浜高で鍛え、ベイスターズの門をたたき、球界屈指の主砲へと成長した。そして20年、東京五輪の野球競技は“筒香の庭”で行われる可能性が高い。ハマスタでの成長の軌跡を振り返るとともに、20年東京五輪への思いを語った。

 07年7月29日。横浜1年夏の神奈川大会準決勝、東海大相模戦にスタメン出場。相手エース菅野(巨人)に衝撃を受けた。「こんなボールは打てないと思った。えぐかったとしか言いようがない。(4打数)2安打はしたけど、たまたま。上には上がいると痛感した」

 08年7月26日。横浜2年夏の神奈川大会決勝、横浜創学館戦で甲子園出場を決めたが、打撃不振で途中交代を告げられた。「ぼてぼての打球でセンター前にタイムリーを打ってすぐに代えられた。小倉部長に『そんな打撃だったら出なくていい』と厳しく怒られた。鼻をへし折られた気分だった。努力が足りないと教わった」

 09年7月27日。横浜3年夏の神奈川大会準々決勝、横浜隼人戦。4点差を追いついた9回1死二、三塁の絶好機で一ゴロに倒れた。延長10回は自身の悪送球を皮切りにサヨナラ負け。「8回に敬遠されてもう打席が回ってこないと思った。試合中に涙が出てきた。結局最終打席はチャンスで凡打。守備でもミスをして高校最後の夏が終わった。主将としてふがいなかった。最後まで諦めないということと、勝手に自分でストーリーを作らないということを学んだ」

 10年10月7日。プロ1年目の阪神戦。3打席目に久保田から1軍初安打となる1号ソロ。チーム通算3500勝に花を添えた。「その試合がシーズン最終戦。初球の直球でしたね。今でも鮮明に覚えている。試合前に三浦さんと村田さん(現巨人)に『どうせだったら本塁打を狙え』って言われました。高校時代は横浜スタジアムで本塁打を打てなかったので、すごくうれしかった」

 14年4月12日。プロ5年目のヤクルト戦。前年の秋季キャンプのメンバーから漏れ、汚名返上を期したシーズンで1号を放つ。1点を追う6回に逆転2ラン。「開幕直後はずっと打てなくて苦しんだ。調子が上がってこなくてすごく不安を感じていた中で、ヤクルト石川さんから打った。自分の中で今までで一番印象深い1発です」

 16年6月4日。プロ7年目のロッテ戦。延長10回2死、守護神西野のカーブを完璧に捉え、自身初のサヨナラ弾。「キャプテン、4番を任せてもらっている以上、チームが勝つために仕事をしないといけない。自分の役割を全うできた。ホームベースでチームメートに迎えられ最高の気分だった」

 20年8月。プロ11年目に東京五輪が開催される。競技復帰が決定する見通しの野球・ソフトボールのメイン会場候補に横浜スタジアムが挙がっている。「プレミア12で悔しい思いをした分、来年のWBCもそうですが、国際大会への意識が強くなった。五輪はまだ先なのですが、もちろん目標にはなる。今、強く思うのは野球人気の回復。子どもたちにもっと野球を楽しんでほしいし、プレーをしてほしい。その先に野球界としての東京五輪がある。自分の姿が野球界を盛り上げる一助になれるよう、大好きなこの球場でもっともっと暴れたい」【取材・構成=為田聡史】