「メークドラマ」再現へ、巨人田口麗斗投手(20)がまた躍動した。プロ初完封した前回登板の勢いそのままに、7回2/3を2安打1失点に抑え、チームトップタイの8勝目を挙げた。甲子園で初戦を突破した母校・広島新庄の後輩からメッセージを受け上がったマウンドでの快投。今季最多の貯金9とし、首位広島とのゲーム差を再び4・5ゲームに詰めた。

 巨人田口は動じなかった。1回、2四球で1死一、二塁のピンチを招き、DeNA筒香を迎える。一呼吸置き、気持ちを落ち着かせた。「初球から来る」。低めのスライダーで芯を外させ、1球で投ゴロ併殺に仕留めた。立ち上がりを無失点でしのぐと、尻上がりに調子をあげ、8回途中までを2安打1失点、7奪三振。「1人の打者を確実に抑えるという課題が出た。次に生かしたい」と満足感よりも課題が口をついた。

 後輩に見せるべき姿を意識した。母校の広島新庄と関東第一の試合を寮でテレビ観戦後に完投したエース堀瑞輝(3年)に連絡。ねぎらうつもりが「田口さんも頑張ってくださいね」と逆にエールをもらった。プロ入り前の高校3年夏の広島大会決勝。瀬戸内との延長再試合の激闘が高校時代のハイライトで、2日間で計23回、299球を投げ抜いた。試合には敗れたが、田口の姿を見て入学を決めた世代の甲子園1勝に、自身プロ最多の134球の快投で祝福した。

 高校時代は土砂降りの雨の中、練習試合をこなしたことも当たり前だった。当時のハングリーな姿勢を思い起こし、7回2死から自らの判断で中前打を放ち、長野の2ランにつなげた。高橋監督も「こちらは半分は投球に専念してほしいと思ったが、本人の強い意思だった。ローテとして期待に応えつつある」と評価。首位広島とのゲーム差は4・5。自身5連勝を飾った田口が「奇跡」を引き寄せる。【細江純平】