虎の坂本です! 阪神ドラフト2位ルーキー坂本誠志郎捕手(22)が4回、プロ1号を放ち、3連勝に貢献した。守っても先発藤浪と初コンビながら7回1失点、10奪三振の好投を演出。クライマックスシリーズ(CS)出場を争う3位DeNAとは1・5ゲーム差に接近。広島に優勝マジックが点灯した日、虎に新たなヒーローが誕生した。

 左中間席を見つめながら、坂本は走った。4回先頭。DeNA久保康の真ん中に入ったスライダーを振り抜いた。ゆっくりとバットを引き、最短距離でインパクト。お手本のようなスイングでアーチをかけた。

 「甘いボールをしっかり打ち返せましたし、いい結果が出て良かったです」

 プロ入り初となる本塁打。決して坂本の専売特許ではない。だが、それはアーチストのような弾道だった。金本監督も「僕はバッティングが悪いとは思っていない。慣れたら打てると思う。捉える姿勢もいい」と目を細める。

 守備でも輝いた。2連敗中だった藤浪と初コンビを組み、7回1失点の好リード。初回無死一塁では、二盗を試みた桑原を二塁で刺し、プロ入り初の盗塁刺を記録。さらに4回には、北條の一塁悪送球を素早くカバー。二塁進塁をもくろんだロペスを挟みこみアウト。坂本の独壇場といえる活躍だった。

 決して恵まれた体格や抜群の身体能力を持っているわけではない。それでも高校でも大学でも代表でもチームに欠かせない存在になってきた。履正社の岡田監督と明大の善波監督、両恩師が坂本を語る上で口をそろえて言うのは「工夫」だ。岡田監督は「周りと同じことをしていてはいけないことを誰よりも理解している。今まで見てきた中でも、彼の工夫する能力は一番でしょう」。ヤクルト山田らを育てた指導者もうなる、努力が坂本の根源だ。

 プロの世界に入っても、工夫という名の努力を惜しまない。8月16日、京セラドーム大阪の広島戦。坂本はこれまで使用していた黒色のプロテクターを一新した。縁を白色で囲ったものをメーカーに発注した。「黒一色だと同化しちゃうんで。周りを白にすることで分かりやすくなりますし、ピッチャーも投げやすくなると思ったんで」。いついかなる時でも最善を尽くすのが、この男の身上だ。

 チームは直接対決に連勝して3位DeNAに1・5ゲーム差に迫った。2試合連続先発マスクでけん引した新人は「できていることもありますけど、できないこともそれ以上にあるんで。続けていきたいです」。同じ明大出身の高山に負けじと、坂本が光った。【梶本長之】

 ◆坂本誠志郎(さかもと・せいしろう)1993年(平5)11月10日、兵庫・養父市生まれ。養父小1年から「養父カープ」で野球を始める。履正社(大阪)では1年夏からベンチ入り。甲子園には2年夏と3年春に出場。明大に進み、主将も経験。座右の銘は「率先垂範」。好きなタレントは石原さとみ。176センチ、78キロ。右投げ右打ち。