前守護神、6年ぶりの先発転向…そんな“肩書き”は、もう必要ない。ロッテ戦(札幌ドーム)に先発した日本ハム増井浩俊投手(32)が、7回2失点で今季8勝目。今季先発7試合は1敗後に5連勝と、抜群の安定感でローテの軸になっている。ソフトバンクが勝ったため自身の白星で首位浮上はならなかったが、0・5ゲーム差の追走を演出した。

 この夏の強烈な日ざしでコンガリ焼けた右腕で、力強く踏みとどまった。前守護神の増井が、負の連鎖が続いていた先発陣のストッパーになった。2戦連続で先発が序盤に崩れ、チームは連敗。自身も初回2失点を喫して「やっちゃったなと。でも、2点で粘ればいいやと。先発は取り戻すことが出来る」。3者凡退は2回だけだったが、粘り強くピンチを切り抜け続け、打線の援護に応えた。

 新たなスタイルが定着してきた。7月、守護神から先発に転向した際に「アンダーシャツを長袖から半袖に替えたんです」。先発調整を行っていた2軍戦は、真夏でも基本的にデーゲーム。厳しい暑さに耐える意味もあったが、もう一つ、理由があった。

 増井 今は長いイニングを投げるために、相手にどんどん振ってほしい。球種がバレてもいいから。球数も減りますからね。

 長袖を選んできたのは、失敗が許されないセットアッパー、守護神として細心の注意を払うためだった。「ボールを握った時、右腕の筋肉の形で球種がバレると聞いたので」。以前は直球とフォークのシンプルな組み立て。相手に読まれないための工夫だったが、先発転向でカーブやスライダーも持ち球に加えた。細かいことを気にせず、今は「コントロールを意識して、四球も少なく、打たせて取ることが出来ている」。大胆な心持ち、開き直りが快投を続けるスパイスとなっている。

 自身5連勝での8勝目は、1年目の10年に着用していたデザインのユニホームで勝ち取った。「懐かしかったです」と、当時と同じ先発投手として、激しい優勝争いの中でチームに白星を運び続けている。先発投手に白星が付くのは6試合ぶり。「いい流れが来るようにカード頭なので、頑張りました」。歓喜のゴールを信じて、頼もしい右腕をチームのために振り続ける。【木下大輔】