ソフトバンク工藤監督が執念の継投で首位を守った。6回表にベンチを出て、審判に「岩崎」の名を告げた。和田の姿に違いを感じていた。「手を振る場面があった。(左肘が)気になっている。疲労が取れていなかったと察知した」。15勝左腕が故障しては大きなダメージになる。投手コーチに交代を指示。今季は先発と中継ぎの両方をこなす「ジョーカー」に託した。

 岩崎は落差のあるフォークを多投しながら、好調のオリックス打線を封じた。8回には難敵吉田正を一ゴロに仕留め、試合の方向性を固めた。1死一塁でスアレスにバトンを渡し、1安打無失点でミッションを遂行した。「調子のいい吉田君を抑えられてよかった。去年はチームの力になれなかった。今は1軍で投げるのが楽しい。明日も行きます」と力強かった。

 試合前、指揮官はつぶやいた。「残り13試合か…。どうなるんだろな。誰も分からないから、面白いんだ。野球の神様だけが知っている」。日本ハムとデッドヒート。たった1日の勝敗がペナントレースの行方を左右する。野球の神様にほほえんでもらうために、工藤監督は必死だ。6回には無死一、三塁で二盗をしかけたが、失敗に終わった。「二、三塁で今宮君の打撃にかけようと思った。僕のミス」と猛省。それでも8回にはセーフティースクイズで追加点をもぎとった。

 シーズン最終盤で総力戦の様相だ。36球を投げた岩崎の連投も辞さない。指揮官はあらゆる選択肢を否定しなかった。「そんなに弱くないから大丈夫だ」。日本ハムとのゲーム差は「0・5」のまま。勝率僅差の激闘はまだ続く。【田口真一郎】