Bクラスが確定していても、巨人戦勝利は格別だ。阪神は今季11戦目で初めて甲子園での巨人戦に勝利した。ドラフト1位高山俊外野手(23)が1回、巨人戦初アーチとなる7号決勝ソロをバックスクリーンに放り込んだ。さらに2安打を積み重ね、あの長嶋さんの新人年にあと1度と迫る13度目の猛打賞。待ちに待ったG倒劇の大ヒーローになった。

 末恐ろしい弾道がバックスクリーンに吸い込まれていく。甲子園で巨人にボロボロに叩きのめされる阪神を救ったのはルーキー高山だった。1回2死。高木が投じた初球速球に襲いかかる。高く上がった7号の先制ソロは、将来のスラッガーを予感させた。

 「いい感触で捉えられた。1球目からしっかりとスイングできる準備ができていたことがよかった」。501打席目の巨人戦初アーチには試行錯誤の軌跡が表れる。キーワードは2つ。「ひと振りで仕留める」、「準備する」。ファーストスイングでの鮮やかさを金本監督も振り返る。

 「ああいう思い切りの良さというか、狙った球はひと振りで仕留めるというね。まずそこを目標にやってほしい。来た球を確実に捉えるのをやってほしい」

 大砲金本が現役時代もそうだった。狙い球をミスショットしないのは強打者の条件だ。だから、指揮官は高山の成長を「左腕のときにスライダーを狙ったり。内角もある程度、狙って打つとか。内角が来て詰まると思ったら打たないとか。そういうことができ始めている」と評する。高木にはこれまで8打数無安打6三振と大苦戦。狙い球を絞って入念な準備で1発を放った。

 「まだヒットを打ったことがなかった。打ち取られ方とか。相性のよくない投手でしたから」

 巨人は明大時代から触れてきた特別な存在だ。元プロに教わる機会があり、質問をぶつけたのは2度の首位打者に輝いたOBの篠塚和典氏。アンケート用紙に「低めの球に手を出してしまいます」と書くと明快な返事だった。「打たないようにするのではなく拾ってヒットにすればいい」。攻撃的な姿勢を貫き、バットコントロールに磨きをかけ、東京6大学の歴代最多131安打を積み重ねた。

 3回と8回にも快音を奏で、通算13度目の猛打賞。歴代新人最多の58年巨人長嶋にあと1度と迫ると、お立ち台で「できるなら達成したい」と言った。131安打は福留の新人時に並ぶ。大学時代の柔らかさに加え、鉄人仕込みの力強さも備える。安打記録についてこう話す。「大学のときは気にしてましたけど、いまは1つ1つを精いっぱいやるだけです」。甲子園での巨人戦は、今季11戦目で初勝利。消化試合などない。目の前の1球への執着心で、分厚いGの壁を破った。【酒井俊作】

 ▼高山が今季13度目の猛打賞(3安打以上)。2リーグ制後の新人猛打賞プロ野球最多、58年長嶋(巨人)の14度にあと1度とした。通算131安打は、前日まで並んでいた赤星を抜き球団新人単独2位。現チームメートの99年福留(中日)に並びセ6位タイで、球団最多の98年坪井135安打にあと4とした。また62打点はセ新人12位の61年徳武定之(国鉄)と並び、球団記録の50年徳網茂69へあと7。

 ▼高山の7本塁打は阪神ドラフト入団新人で72年望月充、14年梅野隆太郎と並び3位。(1)69年田淵幸一22本(2)80年岡田彰布18本。