大乱調を来季完全復活へのステップとする。右肩痛などに苦しんできたソフトバンク松坂大輔投手(36)が、10年ぶりに日本球界1軍マウンドへ帰ってきた。楽天25回戦(コボスタ宮城)の8回に登板。制球を乱し、4四死球あり、3連続被安打ありと1回5失点で炎上。それでも、昨年8月に受けた右肩手術からの復帰を前向きにとらえ、3年契約の最終年となる17年シーズンでの復活を誓った。

 厳しい現実だった。松坂がストライクをとることにさえ苦労した。先頭嶋に四球を出すと島内、そして最高に盛り上がるはずの代打松井稼にも初球を当て、連続死球。ペゲーロには押し出し四球を与え、4連続四死球。続くウィーラーへの初球が捕逸となり、さらに1失点。内野ゴロで3点目を許しつつ、ようやく1死を奪ったかと思えば、そこから3連打を浴びた。1回5失点。最後は連続三振でしのいだが「消化するには時間がいる」と言うほどの乱調だった。

 だが、誰もが待っていた瞬間は実現した。昨年8月に右肩手術を受けた。ソフトバンク2シーズン目の今季は右手の違和感や腰痛にも苦しんだ。それでも、復帰をあきらめなかった。登板に向け、名前がコールされると、球場は大歓声と拍手に包まれた。西武時代の06年10月7日プレーオフ以来、3648日ぶりの日本球界1軍マウンド。「自分が望む結果ではなかった」と振り返りつつ、戦場に戻ってきた右腕は言った。

 「結果と内容を受け止めて、また(ファーム施設のある)筑後で頑張ります。来年に向けて、また一からつくりあげていく」

 これまでも苦い思いを糧にしてきた。自宅には昨年手術を受けた時に除去した1センチほどの骨棘(こっきょく)が保管されている。「何かが当たって骨が筋肉を圧迫する感じだった。これがなくなったことが一番大きい。記念にもらいました。お守りというわけではなく、こういうものが(体の中に)あったということを忘れないために」と話す。小さな骨と同じように、この日大炎上した1イニングを忘れないはずだ。

 来季は3年契約の最終年。37歳シーズンは背水イヤーとなる。試合後、監督室に呼ばれ、工藤監督に「前を向いてやることが大事」と言葉をかけられた。今日3日から2日間休養し、5日から福岡・筑後市のファーム施設で来季へのスタートを切る。故障や衰え、そして相手打者との戦いが待つ道へ。苦悩の39球を、怪物復活ロードの出発点にしてみせる。【石橋隆雄】

<ソフトバンク松坂の一問一答>

 -大歓声の中、マウンドに上がった

 松坂 敵、味方関係なく応援してくれたことはありがたい。

 -3安打、4四死球、5失点

 松坂 緊張感はもちろんあった。望む結果ではなかったですけど、よくても悪くても投げることができてよかった。しっかり結果と内容を受け止めてこれからどうするかしっかり考えて、また(ファーム施設のある)筑後で頑張ります。

 -クライマックスシリーズでの登板は難しくなった

 松坂 もうないと思います。筑後で頑張ります。自分の中で(結果を)受け止めて消化していくのに時間はいるでしょうけど、その間なにもしないわけではないので。