ハマの主砲は短期決戦でもすごい!! DeNA筒香嘉智外野手(24)が、決勝の逆転2ランで下克上の第1歩を踏み出した。巨人とのクライマックスシリーズ(CS)ファーストステージ第1戦。1点を追う6回、マイコラスの変化球を右翼席中段にぶち込んだ。筒香と梶谷はペナントレースから巨人戦は3戦連発、ロペスは4戦連発と主軸の1発攻勢で圧倒。球団史上初のCSの初陣を勝利で飾り、ファイナルステージ進出へ王手をかけた。

 1、2、3、ズドーン! 敵地・東京ドームがうなった。6回2死一塁、筒香の打棒がさく裂した。カウント3-1からの甘く入ったチェンジアップ。「真っすぐに合わせて1、2、3で思い切り振ったら、チェンジアップが来た。打った瞬間にいったと思いました」と本能のままにバットを振った。一打で試合を決め、悠々とダイヤモンドを周回。劣勢ムードを一振りでひっくり返した。

 空が見えないドーム球場での1発は、あのときの光景と重なった。筒香の中学時代、実家は和歌山県橋本市内でガソリンスタンドを営んでいた。「学校が終わって友達と遊んだことは1度もなかった」。授業が終わると自宅裏に父和年さんが設営した“手づくりドーム”に直行した。打撃マシンの球詰めは兄裕史さんが買って出た。「ボール代が高かったと思うし、兄貴は大学を途中でやめてまで僕の練習に付き合ってくれた。自分の打撃の土台はそこで培われたと思っています」。家族一丸で球界屈指のスラッガーを生み出した。

 時刻も当時と同じだった。所属していた堺ボーイズの練習は土日と平日の1日だけで週3回。それ以外の日は午後4時から同8時前までは連日の特訓が待っていた。「僕の家族は8時に家族全員で夕食を食べる決まりになっていたので」。ナイター設備も完備された農業用のビニールハウスで野球だけに打ち込んだ努力が、この日の白球にもしっかりと伝わった。

 レギュラーシーズンでは44本塁打、110打点の“2冠”でチームをCS進出に押し上げた。初めて経験する舞台でも何一つ変わらぬ存在感で主砲の役割を全うした。巨人バッテリーの執拗(しつよう)なまでの内角攻めにも「嫌がったら相手の思うつぼ。僕は来た球、打てる球を打つことだけに集中した」。4番としての威風堂々とした振る舞いを体現してみせた。

 ファーストステージの初戦を勝ち取り、絶対的に有利な状況をつくった。「今日の試合を取れたことは本当に大きい。明日勝って(ファイナルステージ進出を)決めたい」。下克上へ、会心のスタートを切った。【為田聡史】

 ▼筒香が6回に逆転2ラン。セ・リーグの本塁打王がCSで本塁打を放ったのは12年バレンティン(ヤクルト=2本)以来3人目だ。プレーオフ、CSの逆転本塁打は15年ファイナルS第1戦坂本(巨人)以来通算24本目になるが、4番打者の逆転弾は14年1S第2戦T-岡田(オリックス)以来7本目。セ・リーグでは07年2S第3戦ウッズ(中日)以来2本目となり、セ・リーグの日本人4番打者では初めてだ。また、DeNAは大洋時代の60年、横浜時代の98年に日本シリーズに出場したが、本塁打以外でも逆転打を打った選手はなし。筒香の1発は球団史上初のポストシーズンの逆転打となった。

 ▼DeNAが逆転で先勝。3試合制のプレーオフ、CSで第1戦に勝って王手をかけた21チームのうち19チームが1Sを突破しており、突破確率は90%になる。CSは初出場のDeNAだが、日本シリーズは60、98年と2度出場。60、98年とも第1戦に勝って日本一となっており、これでポストシーズンの第1戦は3戦3勝。