瀬戸際の巨人を、首位打者のキャプテンが救った。

 1敗で迎えたDeNAとのクライマックスシリーズ(CS)ファーストステージ第2戦。1番坂本勇人内野手(27)が3回に2戦連発となる同点ソロを放つと、8回は右中間への二塁打で決勝打をお膳立てした。負ければCS敗退決定の大一番で、チームの枢軸として躍動。1勝1敗のタイに持ち込み、ファイナルステージ進出に逆王手をかけた。

 思わず感情がむき出しになった。1-1の8回。坂本はDeNA三上の外角直球をはじき返し、二塁に滑り込んだ。勢いよく立ち上がりながら「よし!」と両手のひらを思い切りたたき合わせた。打線は7回まで2安打と沈黙。CS敗退と背中合わせの状況で、長野の決勝打を呼び込む一打を決めた。「勝ってもう1試合できるようにと思っていた。点に結びついて良かった」。下克上への望みをつないだ安打は、レギュラーシーズンの168本とはまた違い、価値があった。

 重苦しい空気を振り払ったのも坂本だった。1点ビハインドの3回2死。今永のカーブに体勢を崩されつつ「(軸足に)しっかり残してうまく拾えた」とチーム初安打となる2戦連発弾を放った。今CSは7打数5安打と進撃が止まらない。首位打者を獲得した好調ぶりで1番起用に応えつつ「チームが勝つのが一番」という主将、主軸としての信念はぶれない。

 必勝厳命の緊張感が漂う一戦前でも、細部に勝利の可能性を探る。試合前練習後、筒香のフリー打撃を1人、一塁側ベンチから見た。特定打者の練習を見るのは珍しい。「やっぱりきれいに体が回ってますね。自分も筒香みたいに回るように意識してます」。前日の初戦で逆転弾を放ち、今の球界で最強スラッガーとも言える敵軍主将。決戦に向けて集中力を高める時間を割き、筒香の左スイングをベンチ横でマネた。今季から取り組む軸足中心で回転する自らの打法のイメージに重ね、本番で実行した。

 レギュラーシーズンからのDeNA戦7連敗という負の連鎖も断った。エース菅野の先発回避と正二塁手クルーズ不在という逆境にも負けず、逆王手をかけた。「明日も負けたら終わり。勝って広島にやり返すチャンスをつかみたい」。徳俵に足がかかっていた巨人を、坂本が土俵中央まで押し戻した。【浜本卓也】

 ▼坂本が2試合連続本塁打。CSで巨人選手の2戦連発は08年2Sの李承■、14年ファイナルSの亀井に次いで3人目だ。CSの本塁打は通算6本目となった坂本だが、そのうち同点3本、逆転1本と4本が肩書付きの殊勲アーチ。プレーオフ、CSの通算本塁打5傑を出すと、(1)ウッズ(中日)和田(中日)8本(3)森野(中日)中村(西武)7本(5)里崎(ロッテ)井口(ロッテ)坂本6本。通算6本は5位タイで、殊勲アーチ4本は和田5本、里崎5本に次ぎ、セギノール(楽天)と並び3位タイと勝負強さを見せている。また、巨人は2試合で5得点だが、坂本が4得点。プレーオフ、CSの1Sで4得点以上は9人目で、セ・リーグでは初めて。

※■は火ヘンに華