東京ドームに横浜旋風が巻き起こった。DeNAがクライマックスシリーズ(CS)ファーストステージ第3戦で巨人に延長11回、4-3で競り勝ち、対戦成績を2勝1敗としてファイナルステージ進出を決めた。アレックス・ラミレス監督(42)は「しょうがない」という日本独特の表現を前向きなものとして捉え、チームを巧みに操った。12日から、リーグ優勝した広島とのファイナルステージに挑む。

 敵地に「ラミレスコール」がこだました。引き分けすら許されない大一番を制し、球団初のファイナルステージ進出を決めた。ラミレス監督は試合後、ナインを左翼方向へ誘導した。青く染まった光景が広がっていた。「この3試合、信じられないぐらいの応援をしていただいた。力強く背中を押してもらった」と、感無量の表情でファンと喜びを分かち合った。

 思い描いたゲームプランではなかった。アクシデントをはねのけ、19選手を投入した総力戦となった。1回、梶谷が左手に死球を受け、負傷交代を強いられた。主力打者が姿を消し、球場がざわつく。だが、指揮官は動揺するそぶりすら見せずに、関根を代走に送り出した。「クロスゲームになると予想して守備力を重視した。あとは、関根の足で内海に重圧をかけ、ロペスの打席を有利にしたかった」。狙いは的中した。ロペスの2ランで先制に成功。“しょうがないシチュエーション”の中でピンチをチャンスに変えた。

 人を受け入れ、状況を受け入れる精神が、生きざまの幹にある。00年11月、ヤクルト入団とともに初来日。「なぜ、俺にバントのサインが出るのか理解できなかった。日本に野球を教えに来たくらいの感覚だった」。来日直後はプライドを誇示するばかりで自己主張だけが先行していた。異国の地で過ごす日々の中で少しずつ考え方が変わった。「自分の考えが間違っていた。日本の野球はレベルが高い。日本の文化を理解しなければ成功は出来ないと思った」。そう気付かせてくれたのは、1つの日本語だった。

 「しょうがない」

 ネガティブな意味合いで捉えてはいない。「日本人は素晴らしい。自分のことよりも先に相手を、そして状況を受け入れる精神がある。私もその精神を学んだ」。CS前にエースの山口が離脱し、レギュラーシーズンは3位で敵地でのCS開催となった。だが、全ては「しょうがない状況」と受け入れ、前向きな姿勢だけを貫いた。

 球界の盟主を退け、広島への挑戦権を手にした。練習日だった3日に42歳の誕生日を迎えた。ファーストステージ突破を決め、報道陣には「ファイナルステージ第1試合の当日、ランチの時間にビッグなストロベリーケーキを用意してくださいね」とちゃめっ気たっぷりにリクエスト。広島切符とともに大きな“誕生日プレゼント”をゲットした。【為田聡史】

<ラミレス監督逆境克服アラカルト>

 ◆開幕投手不在 開幕投手に指名した山口が故障で回避したが、井納が7回無失点の好投で初陣勝利。CSでも山口の回避を井納が埋めた。

 ◆2番梶谷不在 打線の鍵と期待していた「2番梶谷」が故障で開幕に間に合わず。次々に若手外野手を試した結果、桑原が1番に定着した。

 ◆正捕手不在 昨年は80試合以上先発した正捕手が不在の状況。新人の戸柱を抜てきし、124試合に先発起用した。

 ◆守護神山崎康の不調 守護神山崎康が8月に月間防御率15・12と不調に陥る。三上を代役に立てつつ、田中、須田の重用で乗り切る。

 ◆先発左腕不在 昨年、左腕の先発勝利は5。今季は今永、石田、砂田と左腕の先発が18勝を稼いだ。