歓喜の「9・10」再現とはいかなかった。静かなダッグアウト裏通路で、先発した広島黒田博樹投手(41)は敗戦の責任を一身に背負った。怒りを押し殺したように、表情を変えずに投球を振り返った。

 「一番は自分のやりたいことができないという歯がゆさがある。自分の力のなさだと思う。立ち上がりはそんなに悪くないし、ブルペンでも悪くなかったけど、結果的にこういう結果になったので、自分の責任」

 10日の練習中にキャッチボールを中断し、右肩と脇腹のマッサージを受ける場面あった。黒田は「結果がすべて。シーズン中と変わらない状態でマウンドに上がれた」とコンディション不良を否定し、言い訳は一切口にしなかった。だが4回、2死一塁からエリアンへ「容易に行きすぎた」と悔やんだ内角球は、右翼席に吸い込まれた。5回にも筒香を歩かせた直後に適時打を浴び、7安打3失点で降板した。

 9月10日、25年ぶりのリーグ優勝を決めた巨人戦の再現が期待された。1番から9番まで、オーダーは全く同じ。緒方監督は「向こうもすごくいいプレーをしているし、ただこっちも気持ちで全然負けていない。ミスがあったので、その反省を踏まえた上で臨みたい」と敗戦にも動じなかった。黒田も「また明日切り替えて。まだ1つ負けただけ。またみんなで1つになって戦っていく。みんなの気持ちは変わらない。また明日」と最後は前を向いた。黒田のように、ナインが感じた悔しさを次なる戦いにぶつけ、今日こそCS突破を決める。【前原淳】

 ▼41歳8カ月でCS初登板の黒田が敗戦投手。プレーオフ、CSで40代投手の登板は07年小宮山(ロッテ)08年下柳(阪神)08、10、12年山本昌(中日)13年斎藤(楽天)に次いで5人目。08年1S第2戦下柳が40歳5カ月、13年ファイナルS第4戦斎藤が43歳8カ月で白星を挙げたが、40代の敗戦投手は初めて。