BCリーグ福島ホープスの貴規外野手(23)が12日のプロ野球12球団合同トライアウト(甲子園)を受けることが9日、分かった。プロ野球復帰をかけた今季、登録期限の7月31日に支配下選手復帰がかなわず、3度目の挑戦となる。兄のヤクルト由規投手(26)は7月9日、1771日ぶりに1軍登板を果たした。兄の復活に続き、弟も夢舞台への復帰を実現させる。

 3度目の挑戦を決めた貴規から熱気があふれ出ていた。「野球を続けたい。トライアウトを受けないで終わるのは後悔する」。昨年のトライアウトでは7打数4安打と気を吐くも、声はかからなかった。今季も3割を切ることなくアピールを続けたが、7月末のNPB支配下選手登録は実現しなかった。シーズン中の復帰が絶たれても打ち続け、リーグ2位の94安打、打率3割1分3厘で意地は見せた。

 兄由規の言葉が貴規を何度も立ち上がらせた。貴規がヤクルトを退団した14年末。由規からかけられた言葉が胸に突き刺さった。「自分は今投げられないけど、野球を続けて俺を奮い立たせて欲しい」。引退を考えていた貴規は、兄の言葉で踏みとどまった。プロ野球復帰を視野に、福島ホープスでプレーを続けた。

 貴規の思いが届いたのか、相次ぐ故障に苦しんでいた由規が7月9日、1771日ぶりに1軍マウンドへ戻った。遠征先の宿舎から兄の勇姿を見届けた貴規は、涙が止まらなかった。「リハビリでキツイ練習をしていた姿を思い出した。よく戻った」。翌日10日には貴規が祝砲となる2ランを打ち上げた。

 現在は実家のある仙台市内で調整を続けている。「僕自身も奮い立たせてもらった。野球をやっている以上は兄と同じ舞台で対戦することを目標にやりたい。今度は僕が復活する番」。由規には既に電話で報告を済ませ「野球続けるんだから当たり前だろ」と笑ってエールを送られた。兄弟愛で結ばれた貴規がもう1度、夢の扉をこじ開ける。【高橋洋平】

 ◆貴規(たかのり)本名佐藤貴規。1993年(平5)1月29日、仙台市生まれ。北仙台小5年から野球を始め、仙台育英高では3年夏に甲子園出場。10年育成ドラフト3位でヤクルト入団。14年限りで退団し、15年にBCリーグ福島ホープス入り。180センチ、79キロ。右投げ左打ち。家族は両親、兄2人。