阿部ノートを託す。巨人阿部慎之助捕手(37)が11日、自身の捕手生活で培った考えをノートにまとめ、自主トレをともにする小林誠司捕手(27)に渡すことを明かした。配球論だけでなく、心構え、キャンプでの過ごし方など内容は多岐にわたる。来季から一塁手に専念する一時代を築いた名捕手が次世代に伝承していく。

 A4用紙の冒頭に阿部は記した。「捕手とは目配り、気配り、思いやり。投手を信頼してもいいが、信用するな」。自主トレ後のサウナで、約20年に及ぶ捕手人生を反すうしている。教訓、心構え、配球論…。思い起こした考えをノートに書き留めている。かの有名な野村ノートならぬ「阿部ノート」は用紙4枚分に及び、今も書き足している。

 初めて自主トレをともにする小林誠に渡す。自身は来季、非常時以外はマスクをかぶるつもりはない。「小林をどうにかしないと勝てない」。次の扇の要と認めるからこそ、考えをすべてたたき込む。

 キャンプでは投手の球をすべて受け、チェックポイントを聞け-。投球フォームの基軸となるポイントを確認し、共有する。「投手の調子が悪い時に指摘できる。ガラッと変わる投手もいる」。哀楽は出さず、喜怒は出せ-。投手に感情をぶつけて、捕手の真意を伝える。「思っていることをバンとやらないと伝わらない。投手への返球の強弱も大事」。小林誠に教えたいことは無数にある。

 ベンチの定位置も譲る。ホーム時は左端奥の投手の隣に座ってきた。「自分も最初は監督の前だったけど、攻撃時にもっと投手と話すためにお願いして移った。小林もそういう時間を増やした方がいい」と話す。

 代々、受け継がれてきた。阿部もかつて村田真現ヘッドコーチに「ワンサイドで負けていても、キビキビ動け」と言われ、刻んだ。「1人、反対方向を向く捕手はいつも見られている。それを意識して行動をしなければ」と解釈した。マスクは心のロッカーにしまった。ノートと強い思いを後輩に残す。【広重竜太郎】