遠投110メートルの強肩を誇る旭川大・生田雄也捕手(21)が、四国アイランドリーグ・徳島入りする。今秋のプロ野球ドラフト指名から漏れ、一時は野球から離れる決断をしたが、旭川工高時代の恩師・佐藤桂一監督(59)の説得で翻意。独立リーグから来年以降のドラフト指名を目指す意向を固めた。12月中に徳島と契約交渉などを行い、合意後に正式発表される。

 まさかのドラフト指名漏れから約2カ月、生田が「全く縁のない」四国の徳島に自分の進路を見つけ、生気を取り戻した。「来年の(NPBの)ドラフトでは指名してもらえるよう、高校球児のようながむしゃら感でアピールしないと」と、晴れ晴れとした顔つきで言った。

 ボールをキャッチしてから送球が二塁に到達するまでの時間は1・76秒。高校時代からノルマにしてきた握り替え練習の成果で、プロに匹敵する送球スピードを身につけた。大学4年秋のリーグ戦では、全体2位の打率でチームを9季ぶりの優勝に導き、MVPも獲得した。準備万全のドラフト当日。テレビの前で大学の同僚と約3時間待ったが、名前は呼ばれなかった。「しばらく何もする気がなくなった」という。

 一般企業の就職面接が佳境に入った12月中旬。突然旭川工の佐藤監督から携帯に連絡が入った。呼び出されるまま母校を訪ねると「まさか野球をやめるつもりじゃねえだろうな」と切り出された。「プロは難しいと思っています」と返すと「これまでいくつもの挫折をしてきたじゃねえか。今回も乗り越えて、強くなれ」と励まされた。ともに甲子園で戦った恩師の約2時間のげきで思い直し、徳島との交渉に臨むことを決めた。

 徳島の関係者は「現在は送られてきた映像を確認している段階だが、強肩、スローイングの速さなど、キャッチャーの資質を備えていると聞いている。条件で合意できれば、2月1日の全体練習開始に万全の状態で臨んでほしい」と話す。

 合流までにベンチプレスで125キロ、スクワットで200キロ以上を挙げられる筋力を付けることを目標にする。「ホームランを打てないとプロからは注目されない。(捕手の)ライバルは3人いるようですが、1年目から即戦力として頑張りたい」。屈辱から立ち上がり、もう1度夢舞台を目指す。【中島洋尚】

 ◆生田雄也(いくた・ゆうや)1995年(平7)3月29日、旭川市生まれ。士別南小3年で野球を始めた。士別南中までは投手で4番。旭川工高ではほぼ全ポジションを経験後、2年秋に捕手固定。3年夏の甲子園出場(1回戦敗退)。大学では1年春にDH、4年春秋に捕手で道6大学リーグベストナイン。4年秋は同MVP。右投げ左打ち。家族は両親と弟、妹。177センチ、82キロ。

 ◆徳島インディゴソックス 独立リーグ・四国アイランドリーグに05年(平17)加盟。現在の運営会社は12年1月設立。過去に11年前期、13年後期、14年前後期の4回優勝。今季は前期が31試合19勝11敗1分けの2位で、後期は34試合14勝14敗6分けで4位。今秋のドラフトでは福永春吾投手(22)が阪神6位、木下雄介投手(23)が中日育成1位で指名された。来季から元福岡ダイエーホークスの養父鉄監督(43)。