阪神坂井信也オーナー(68=電鉄本社会長)が17年シーズンに向け、「虎党ファースト」の精神を強調した。29日に大阪市内の電鉄本社で仕事を納めた。年末恒例となった来年の漢字を問われると、まず挙げたのが、「尊」の文字だ。「酉(とり)という字が挟まっている。ファンを尊び、スポーツマンシップを尊ぶ。野球界もいろいろあった。選手には子どもに尊敬される存在になってほしい」。今年は野球賭博などネガティブな事件が続き、野球界が揺れた1年だった。

 「でも、どこか説教がましく、訓示っぽくなりますね」。そこで坂井オーナーは「楽」の1字を用意した。「木の上で、白星がさえずる格好をしている。ファンの皆さんに、楽しんでほしい。選手たちも、野球を楽しんでやってほしい」。聖地である甲子園を舞台に、ファンと選手が野球本来が持つ魅力を楽しんでもらうことを願った。そして、自らに言い聞かせるように続けた。「苦があれば、楽がある。監督、フロント、私も含めて、苦楽を共にしようという意味もある」。05年のリーグ制覇から11年が過ぎた。今季は就任1年目の金本監督が苦しみながら、チーム再建に取り組んだ。総帥自ら、現場と一体になる決意をしのばせた。

 「酉(年)は難しい」と年末の恒例行事に苦笑した。「尊」と「楽」。異なる文字を並べたが、ファン最優先の気持ちが根底にある。前回のリーグ優勝から、えとが一巡。そろそろ虎党に歓喜を提供したい。【田口真一郎】