異例のキャンプイン直前の契約延長だ。ソフトバンクは20日、今季が3年契約最終年だった工藤公康監督(53)と新たに今季から3年契約を結んだと発表した。年俸は現状維持の1億円(金額は推定)。球団は15年日本一、昨年は2位ながらもシーズン83勝の実績と選手育成を評価し、19年まで契約を更新した。ヤフオクドームで監督、コーチ会議が行われたこの日に合わせ公表。常勝チームづくりへ、工藤監督が勝利と育成に力を注ぐ。

 キャンプへの意気込みを語る場が、異例の契約延長会見となった。テレビカメラが並ぶ前で、スーツ姿の工藤監督は投手王国を築くことを誓った。

 「非常に重く受け止めている。この3年を使って勉強して、育成し強いチームができるように頑張っていきたい。投手出身なので『日本一のピッチングスタッフ』と5年先、10年先も言われるチームをつくっていきたい」

 就任から2年間で武田、千賀、東浜、岩崎らを育ててきた。体の構造、トレーニングなどの豊富な知識に加え、シーズン中も鍛え続ける指導法で、潜在能力を引き出した。新たに3年間という時間的余裕ができたことで、さらなる若手育成に力を注ぐことができる。さっそく春季キャンプのA、B組分けでも「育成」への思いを色濃く出した。

 注目のドラフト1位田中正義投手(22=創価大)はもちろんだが、高橋、松本、左腕の笠原ら期待の若手をA組に抜てきした。第1クール終盤から第2クールで打撃投手をさせるなど、早い時期から競争させる。一方で、昨年15勝勝ち頭の和田、摂津、松坂、大隣らベテランはB組。各自のペースで調整させる。

 秋季キャンプでは率先して嫌われ役、鬼監督になり若手を鍛え続けた。今月12日には母校愛工大名電(当時は名古屋電気)で、在校生を前に「大変だけど、これだけ楽しくておもしろい仕事はない」とプロ野球の監督業について正直な思いを語っていた。今日21日には東京都内で行われる野球指導者講習会で「育成論」と題し、1時間の講義を行う指揮官は、「育てながら勝つ」という2つのテーマへ同時に挑むことになる。

 もちろん最大の目標は、V奪回。16年は前半戦を独走しながら失速して日本ハムに逆転優勝を許した。クライマックスシリーズでも日本ハムに敗れた。「1年、1年が勝負。スローガンの1(ワン)ダホー! のように心ひとつに、チームひとつに日本一を奪回する」。今季への強い思いを口にした。【石橋隆雄】