日本ハムが長かった暗いトンネルを、ようやく脱出した。延長戦までもつれたソフトバンク戦(ヤフオクドーム)を制して、連敗を10で止めた。栗山英樹監督(56)は試合前に福岡市動物園を訪問。逆襲へのパワーを注入して試合に臨み、2週間ぶりの勝利をつかんだ。昨季の王者が、ようやく巻き返しのスタート地点に立った。

 フラフラと上がった打球を二塁手の石井一と右翼の松本が追った。延長10回2死二塁。両者はぶつかりそうになりながら、最後は石井一がウイニングボールをつかんだ。連敗が止まった瞬間、栗山監督はポンと手をたたいて、ひと息ついた。1点差まで迫られながら、逃げ切った。ようやく負の連鎖を止めたが、最後まで息の抜けない展開に「連敗してる時は、こんなもの。よく頑張った」と、苦しみ抜いた選手をたたえた。

 苦しい時の験担ぎも功を奏した。この日の午前中は福岡市動物園を訪れたという。宿舎から約3キロの距離を徒歩とジョギングを交えながら約40分かけて向かった。動物とのふれあいはいつも「癒やされる」と、戦う活力を与えてくれる。日本一に輝いた昨季も、リズムに乗れなかったシーズン序盤は大阪天王寺動物園、8月には仙台の八木山動物園でパワーを注入した。

 この日も、栗山町の自宅で飼うフクロウを見て「頑張ろうな」と声をかけた。ケガをして一般展示されていなかったライオンには「オレも頑張るから、お前も頑張れ」と、エールを送った。もちろん鷹も「見た。写真も撮ってきた」。エネルギーを充電し、選手の躍動を信じて試合に臨んだ。思いは、伝わった。

 連敗を止めたが、気を引き締めた。「ここからが大事なので」と、勝ってかぶとの緒を締めた。この日、函館では桜の開花宣言がされた。「(知人から)メールですごいもらっている。桜が咲く頃には…とね。心配してくれていた」。動物園でも福岡市民から「監督、まだ4月ですから」と、励まされたという。長いトンネルは抜け、逆襲へ。チームの開花も間近だ。【木下大輔】