西武栗山巧外野手(33)が、プロ16年目で初のサヨナラ本塁打を放った。ソフトバンク戦の9回裏1死、岩崎の直球を右中間最深部に運んだ。今季は開幕から好調も、4月8日ソフトバンク戦での右ふくらはぎ負傷を機に、打撃の調子を落とした。出場機会も減る中、因縁の一戦を意地の1発で決着させ、このカードの勝ち越しに導いた。

 栗山は1-1から、岩崎の149キロ直球をとらえると、走りながらボールの行方を目で追った。「入るかどうか分からなかった。少し押された感じがあった」。外野手が追うのをあきらめる姿で、ようやく確信できた。その瞬間、万雷の歓声が耳に入ってきた。

 接戦を決着させる劇的な1発。栗山は「追い込まれた感じがあったので、勝負をかけていました」と振り返った。直前の2試合、栗山はまったく出番がなかった。辻監督は「ここのところ振りが鈍く、動きが悪かった」と明かす。それは栗山にも心当たりはある。

 4月8日ソフトバンク戦。一塁に駆け込む際、ベースの右端に伸びてきた内川の右足を避けようと、身体を投げ出し転倒した。それを機に、右ふくらはぎが強く張った。同14日ロッテ戦途中から戦線離脱。先発復帰に2週間以上を要した。

 練習を裏付けにするタイプ。負傷前は打率3割3分と好調だったが、バットが振れない間に落とした調子は、なかなか戻らない。出場機会を取り戻すため、若手よりも早く球場に現れ、試合後も室内練習場で1時間以上も球を打ち込んだ。

 徐々に調子は戻ってきた。辻監督を「昨日、今日の打撃練習はよかった。今日は栗山でいこうとなった」と決断させた。凡退が続いたが、3回には犠打を決め得点につなげるなど、チームのためにと懸命にプレーした。そして最後に、試合を決める仕事をした。

 「なかなか結果が出せず苦しかったですけど、すべて思うようにいかないのがゲームですから」。久々に、端正なマスクをほころばせた。プロ16年目の巻き返しが始まる。【塩畑大輔】